若年性アルツハイマー型認知症を扱ったアメリカの映画『アリスのままで』が2015年6月、日本でも公開されました。
言語学の著名な研究者であったアリスが50歳という年齢で発症した若年性アルツハイマー病。記憶と認知機能を失う恐怖を表情と仕草で繊細に描き出す女優ジュリアン・ムーアさんはこの映画でアカデミー賞主演女優賞を受賞しています。
日本版、若年性アルツハイマー病映画
渡辺謙さんが主演した邦画『明日の記憶』(2006)を観た方なら、『アリスのままで』には同じような描写がいくつもあることに気付かれるでしょう。
『明日の記憶』も若年性アルツハイマー病を扱った映画として話題になりました。
仕事が大好きで、仕事を生き甲斐としてきた主人公が日常の中で感じる強い違和感や仕事上の失敗を経て病に気付き、職を失い、家族に支えられ、疎まれ、苦悩し、それでも何とか生きながら大勢の前でスピーチし、自らの行く末を自ら整えようとする…
認知症患者たる主人公本人が介護施設を見学に訪れるところまで同じように描かれています。
邦画『明日の記憶』は、こちらの萩原浩さんの小説に感銘を受けた渡辺謙さん自ら映画化を願い出たそうです。
『恍惚の人』
若年性ではなく、老人性認知症を扱った作品としてよく言及されるのは『恍惚の人(こうこつのひと)』でしょう。
こちらは、森繁久彌翁の認知症演技に賞賛が良せられています。原作はやはり小説作品のようです。
日本人なら、これらの作品も必見・必読でしょうか。
アメリカナイズされたストーリー
『明日の記憶』公開の2006年から時は下って、『アリスのままで』は制作年の2014年頃が舞台となっています。
この間に大きく様変わりしたこと。
それは、スマホの登場・普及でしょう。
『アリスのままで』にはスマートフォンが頻繁に登場し、進行する認知症を脳トレ的にどうにか抑えようとする様が描かれ、同時にその症状の進行を示唆する小道具ともなっています。
また、心揺るがす物語としての『アリスのままで』の核心たる装置がいくつか登場するのですが、そちらは実際に見て確かめてみてください。
医療やテクノロジーの進行は病気のありかた、ひいては人生の捉え方をも根底から覆しうる力を持っている。家族の絆に加えて、そんなことをも感じる映画でした。
『トイレのピエタ』のおばあちゃん
ちなみに、2015年6月公開の邦画『トイレのピエタ』にも老年性の認知症を患うおばあちゃんが出てきます。
介護の担い手が不足する中で、日本における家族介護や家族的束縛の問題としてはこちらの方が今後より大きなものとなるかもしれません…。
認知症介護の在り方とおすすめの本
認知症介護の在り方は、本人と身近な家族の双方にとり突如として深刻なものとなる可能性があります。
プラセボ製薬株式会社では、介護用に偽薬を提供することでそうした深刻さの一部を解消できるのではないかと考えています。
また、認知症を当事者としてではなく外から眺めるものとして、そこに『アリスのままで』で描かれるような悲嘆以外の何かを見出すものとして、以下の書籍を一読されることをお勧めいたします。
おばあちゃんが、ぼけた。
このとぼけた絵柄の表紙を侮るなかれ。
人間を見つめる認知症介護の在り方の全てがここに。
マンガ好きのあなたには
日本が誇るマンガ文化は、介護業界をも射程に捉えています。既にいくつもの作品が公開されていますが、以下の2点に絞ってご紹介。
言わずと知れた介護マンガの金字塔、『ヘルプマン!』。現在でも『ヘルプマン!!』として週刊朝日に連載中です。介護業界に関心のある人全てにオススメ。
また、『実録!介護のオシゴト』もオススメしたい作品。
マンガに欠かせないデフォルメの妙がいかんなく発揮された、腹を抱えて笑える介護マンガがここに。
上記の映画作品は不安や恐怖を煽る内容でしたが、そうした介護観は確実に変化していることがわかります。
認知症の方の家族による、実直な語り
『アリスのままで』は、若年性アルツハイマー型認知症の発症が及ぼす血族(血のつながった家族)への影響という視点が重大なテーマとして挙げられていたように思います。
そこには、なにかしら深く昏く湿り気を感じる語りがあったようにも。
一方で、元々血のつながりのない他人が「配偶者」という形で家族となり、人生を共にし、その果てに認知症介護を経験するということがとても一般的です。夫の介護、妻の介護。それぞれに異なる様相を呈する介護のカタチ。
そうした経験を余すところなく語った本もあります。
京都大学薬学部卒業生の妻による、京都大学薬学部教授だった夫の介護譚。
俳優の夫による、声優だった妻の介護経験談。
いずれも、多くの方に読まれ共感を得ているようです。