夜間対応型訪問介護の事業所数・受給者数は少なく、今後も拡大見込みなし

日本の介護保険制度においては、「夜間対応型訪問介護」と呼ばれる地域密着型サービスが2006(平成18)年より提供されています。

一体どのようなサービスなのでしょうか?また、どれくらい利用されているのものなのでしょうか?

夜間対応型訪問介護とは?

厚生労働省が公開している「介護サービス情報好評システム」では、以下のように当サービスを説明しています。

夜間対応型訪問介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を、24時間安心して送ることができるよう、夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問します。「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがあります。

介護に対する需要は、昼間だけでなく夜間にも存在しています。しかしながら、夜間におけるサービス提供にはそれなりのコスト(特に人件費)がかかるため、通常の「訪問介護」サービスとは別に特別単価での報酬体系を整備しない限り事業者が参入することはありません。

夜間対応型訪問介護は、そうしたコストを考慮しても採算が合うと見込まれるよう介護報酬が設定されているはずだと推測されます。

なお、「定期巡回」サービスの補足説明としては、以下の通り。

夜間帯(18~8時)に定期的な訪問を受け、排泄の介助や安否確認などのサービスを受けることができます。

冒頭の図で示したように、特に夜間帯に限って定期的な訪問介護サービスを受けることができます。サービス提供者によっては朝は「6時まで」など時間帯にばらつきも?

また、「随時対応」サービスの補足説明にはこうあります。

ベッドから転落して自力で起き上がれない時や夜間に急に体調が悪くなった時などに、訪問介護員(ホームヘルパー)を呼んで介助を受けたり、救急車の手配などのサービスを受けることができます。

注意点

夜間対応型訪問介護には幾つかの注意点があります。

まず、要支援1・2の人は利用できません。利用できるのは要介護1~5の方のみです。

また、受けることのできないサービス例として、以下のものが挙げられています。

  • 直接利用者の援助に該当しないサービス
    (例)利用者の家族のための家事や来客の対応 など
  • 日常生活の援助の範囲を超えるサービス
    (例)草むしり、ペットの世話、大掃除、窓のガラス磨き、正月の準備 

ただし、平成28年3月時点での情報であり、特に軽度者(要介護1・2)の方に対する「生活援助」に関しては日常生活の範囲内でも介護給付がなされなくなる可能性があります。

こうしたサービスは全額自費負担での「保険外サービス」として提供されることとなるのではないでしょうか?

サービス提供事業所数は?

さて、夜間対応型訪問介護サービスを提供する事業所の数は2014(平成26)年度の時点でどれくらいでしょうか?

図のオレンジ色の線が夜間対応型訪問介護サービスを提供する事業所の数を示し、2014年度の時点では「217事業所」という少数に留まります。

比較のために2012(平成24)年に新設された「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と比較しても、既に事業所数を追い越されています。

訪問介護

ちなみに、上のグラフに「訪問介護」を加えてみるとどうなるでしょうか。

訪問介護事業所はメキメキとその数を拡大し、2014年時点で3万件を超えています(介護予防も同一事業所が提供する場合が多いため、ほぼ同数)。夜間対応型訪問介護は、通常の訪問介護との差があまりに大きいためグラフの右端にへばりつくように見えています。

要するに、夜間対応型訪問介護の事業所数(サービス提供者)はその他と比較して伸びが非常に悪いことが分かります。

サービス受給者数は?

次に、夜間帯硫黄型訪問介護サービスを受ける、利用する人の数を見てみましょう。

事業所数同様、受給者数の推移においても2014年度の時点で「8,200人」に留まります。やはり新設の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」に追い抜かれています。

訪問介護

再度、「訪問介護」を受給する人数と比べてみましょう(※2006年以降は介護予防の受給者を含む)。

140万人以上が利用する「訪問介護」に比べて、8,200人しか利用していない「夜間対応型訪問介護」は、やはり地に這いつくばったまま上昇気流にのることはできません。

要因の推測

世間では24時間営業のコンビニエンスストアやファストフード店(ハンバーガー、牛丼、etc)など、大変便利なサービスが提供されています。ただし、夜間営業しても来客の見込める都市部に限定されているのが現状です。

また、少子高齢化に伴う人口減少と、働き手の意識変化などによる人件費高騰が雇用情勢を変化させ、「夜間営業したいのに、従業員が集まらず営業できない」という慢性人手不足の店舗もあるようです。

もちろん介護業界においても人手不足の問題があり、「夜間対応」については言わずもがな。

平成26年の厚生労働省による調査で収入に占める人件費割合(平均)が「83.0%」(出所:平成26年介護事業経営実態調査結果の概要)であるとされた夜間対応型訪問介護事業において、安定的なサービス提供は安定的な雇用が前提となりますが、人材確保は中々難しいのが現状ではないでしょうか?

さらにサービスは「使ってもらってナンボ」の世界でもあるため、夜間や深夜に介護要員を待機させていたものの呼び出し等の利用がなければ丸々の待ち損となってしまい収入が安定しません。

こうした状況は今後も改善する見込みがありません。

要介護状態区分は?

さて、夜間対応型訪問介護を利用されている方は、どういった状態の方が多いのでしょうか?

「要支援」の方は夜間訪問型介護サービスを利用できないため、専ら「要介護」の人のみとなっています。大きな変化とは言えませんが、「要介護5」の方の割合が増えつつあるようにも見受けられます。

運営法人は?

特別養護老人ホーム(特養、介護老人福祉施設)は社会福祉法人のみ、介護老人保健施設は社会福祉法人や医療法人といった具合に、介護施設においては運営者が非営利法人に限定される場合がありますが、夜間対応型訪問介護においてはそうした縛りはありません。

2016年3月現在公表されている最新の情報から、夜間対応型訪問介護事業の運営法人割合を見てみましょう。

夜間対応型訪問介護においては、その半数以上が株式会社をはじめとする営利法人によって運営されています。

とは言え、上述のようにその数は非常に限られ、今後も開業する事業者の数が拡大する見通しはありません。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護との比較

実は、夜間対応型訪問介護とサービス内容の重複するサービスとして「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」があります。

厚生労働省が公開している「介護サービス情報好評システム」では、以下のように夜間対応型訪問介護サービスを説明していました(再掲)。

夜間対応型訪問介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を、24時間安心して送ることができるよう、夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問します。「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがあります。

まさに、「定期巡回」と「随時対応」を重ねたサービス名称・内容として「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が存在するのはなぜでしょうか?

大きな違いは以下の3点。

夜間対応型訪問介護定期巡回・随時対応型訪問介護看護
利用時間18~8時まで24時間/365日対応
利用料金1回利用毎月ごとの定額制
訪問看護サービス不可利用可

夜間対応型訪問介護では1回ごとの利用料金、また身体介護は最低30分など時間的制約があったのが、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」においてはもっとフレキシブルに利用でき、料金は月額での定額制となっています。

夜間や深夜でも人を呼ぶことのできる安心感は、市町村が中心となり在宅介護を推進する「地域包括ケアシステム」を構築する上で大変需要なファクターとなりますが、人件費などのコストがどうしてもかかってしまいます。ただ、費用を削るだけでは必要なサービスを提供することができません。

そこで、「月ごとの定額による収入の安定化」および「介護報酬が1回の利用に縛られないため従来より柔軟な対応が可能」とすることで、事業者にとっての参入障壁を出来る限り低く抑えて事業所数を増やす策が講じられたものと思われます。

夜間対応型訪問介護の今後の展開

これまで述べてきたように、夜間対応型訪問介護は収入の不安定さや従業員確保の困難により、事業所数・受給者数ともに伸びてきませんでしたし、今後も拡大する見込みはありません。

どちらかと言えば「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が増えてくるでしょう。

また同じく地域密着型サービスであり、在宅と通いの複合サービスである「小規模多機能型居宅介護」も伸長が期待されています。

いずれも365日、24時間のフレキシブルな対応と月ごとの定額制を基本とする料金体系となっています。2025年をめどに各市町村が中心となって構築が目指されている「地域包括ケアシステム」において在宅分野を支えるのは、上記の2サービスになるものと思われます。