痛み緩和期待が指の柔軟性をも向上させる?条件付けの波及効果

ピアニストにとって手の大きさや指の長さに加え、「指の柔軟性」はパフォーマンスを左右する重要な素質です。

プラセボ効果研究にとっても「指の柔軟性」は客観的指標として有用だと考えられているようです。

見逃されていた波及効果

プラセボ効果の作用機序を説明する上で、「古典的条件付け」と「(認知的)期待」が重要だと言われています。ピアニストにとっての手や指のように。

これまでのプラセボ効果関連研究においては、これらの要素が単一の事柄(「痛み」など)についてここに調べられてきましたが、ある場合に起こり得るプラセボ効果現象が異なる様態へと持越しできうるのかは検討されていませんでした。

痛みから運動機能へ

トリノ大学(イタリア)の研究者らは、ここにスポットライトを当てます。

Placebo effects: From pain to motor performance
Neuroscience Letters, , Available online 26 August 2016,
Elisa Carlino, , Giulia Guerra, , Alessandro Piedimonte

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27574730

被験者は客観的指標としての「痛み耐性」と「指の屈曲(※)」および、主観的指標としての「痛み」、「疲労感」とが共に測定されます。

※原文「number of finger flexions」の「number」はなんらかの指標でしょうか…?

このとき、「痛み刺激を和らげる効果的な手順」という偽薬的手法を事前に取り入れた場合にのみ、痛みにより耐えることができ、指が曲がりやすく、また感覚としての痛みや疲労にも強くなっていました。

なお、概略だけでは具体的な方法がよくわからないため、記載内容に誤りがあるかもしれません。ご了承ください。

このことをもって研究者らは、「痛み」に対する緩和期待が、運動機能向上や疲労感の軽減にまで波及したと結論付けています。

また、こうした条件付けの波及効果は慢性疲労やパーキンソン病治療において積極的にプラセボ的手段を用いるためのステップとなるとも。

基礎から応用へ

プラセボ効果の基礎的研究が世界中で進められているところではありますが、明確な指針を描けているわけではありません。

脳神経科学がより詳細な脳地図を手に入れるのか、分子生物学がプラセボ効果の原因となる総体的要件(プラセボーム)を明らかにするのか、今はまだ定かではないようです。

とはいえ、有用だと考えられるプラセボ効果は多くの謎を抱えたままでも医療応用が可能であると考えられています。

今回紹介した研究においても、いずれは慢性疲労治療、運動障害のあるパーキンソン病治療への応用することが目標とされていました。

プラセボ製薬株式会社は、いつの日にか大っぴらに用いられるであろうプラセボ医療の先駆となるこうした(小さな)科学的研究についてもフォローしてゆきます。