夏が過ぎ秋も深まり、日常的に肌寒さが感じられる頃、お風呂場の寒さ対策記事へのアクセスが徐々に増加します。
記事においては寒さを心理的に抑制し温かみを感じる照明の効果について詳述しましたが、本記事ではもう一点、ユニットバス特有のある現象について述べたいと思います。
俗にいう、「シャワーカーテン効果」です。
シャワーカーテン効果とは?
シャワーカーテン効果とは、ホテルあるいはアパートのユニットバスにおいて使用されるシャワーカーテンが、シャワー使用中にフワリと身体に纏わりついてきて、冬場などには「ちべたい!」と叫びだすような冷たさを放つ現象のことです。
世界中で広く観察される現象であり、その不快さとそれを超える不思議さは、市井の科学者たちのセンス・オブ・ワンダーをくすぐって止みません。
シャワーカーテン効果の科学的理解
シャワーカーテンがフワリ浮き上がるのを見て、これは人とカーテン間の静電気的な引力がうんたらかんたら…と勝手に納得していたのですが、人がそこに立っていなくても、シャワーから水や熱いお湯を出すだけで浮き上がってくるのだそうで。
くらいが素人考えの限界なのですが、換気扇を付けていなくてもカーテン浮き上がり現象が観察されるみたい。
プロの考察は、一味もふた味も違います。
『シャワーカーテンの謎』(PDF…が見られていたのですが、2016年1月現在リンク切れ)と称する日本語訳された、マサチューセッツ大学、Davit Schmidt助教授の極めて真面目な研究によれば、様々な力が関与しているそう。
- 煙突効果(浮力効果:カーテン内の高所・低所の温度差で空気流ができる効果)の影響は軽微・なし
- ベルヌーイ効果(シャワーによる空気のかき回しがカーテン内の圧力を下げる)は影響あり
- 渦の効果(シャワーによって空気が渦を作る整流となり、渦の中心が低圧となる)の影響が支配的
熱帯低気圧が台風に成長し、日本に雨風の影響を及ぼしたのちに温帯低気圧に変わる。
毎年テレビニュースなどで聴かれるように、台風の勢力は中心にある渦の目の気圧の低さで測られます。
毎日浴びるシャワー内でも、極々小規模な台風や竜巻(渦)が現れ、カーテン内に低気圧を生み出し、外からの高気圧に押されるようにカーテンをまくり上げるようです。
プロの本気、恐るべし。
家ならできる対策
この問題については、既にいくつかの解決策が提示されています。ホテルではなく、おうちのユニットバスで試せそうな方法がコチラ。
厚いシャワーカーテンに交換
薄くて軽いシャワーカーテン、特に100円均一ショップで売っているペラッペラのものは纏わりつきやすい。だったら、厚手のものに変えてみれば?という発想。
薄手のものはカビた時にすぐ付け替えられる利便性と100円程度で買えてしまう経済性が捨てがたいのですが、冬場の冷たいシャワーカーテンに襲われるのではとビクビクするくらいなら取り替えてみるのも手かもしれません。
デザインが凝ったものも多数ありますし、2千円程度なら付け替えにそれほど悩むものではないかもしれませんね。
無機質なユニットバス内にオシャレ感を持ちこむという意味でも、良いシャワーカーテンは生活の質を上げてくれます。
つっかえ棒を利用して
生活上の工夫用品として大人気のつっかえ棒(伸縮棒)。スペースなきところに収納スペースを生み出すこのスグレモノは、お風呂場でも活躍します。
ユニットバスに元々ついているカーテンレールを使わず、自前で用意したつっかえ棒をカーテンレールとする。この場合、元の位置より少しバスタブから離して設置すると、バスタブに対して斜めにカーテンがかかるので浮き上がりにくくなります。
また、既にあるカーテンレールはそのまま利用し、つっかえ棒をその下、バスタブから少し離したところに設置することで、シャワーカーテンのたわみを矯正することもできます。
カーテンをバスタブ真上から垂らすのではなく、外側から斜めにかけるよう工夫するのがコツ。
ホテルでも家でもできる対策
ホテルだとカーテンをかけ替えたり、つっかえ棒を毎度持ち込むわけにもいかないため、道具不要の対処法を採る必要があります。
中高生の皆さんへ:シャワーカーテンの正統的使用法
などと思いながら検索して調べてみない人も多くって、初めてのユニットバスあるあるとして以下の経験談が広く流通しています。
シャワーカーテンはバスタブの内側に垂らし、シャワーのお湯が外に出ないようにするのが正統的な使用法だということは多くの大人が失敗を通じ身を持って学んでいますので、中高生の皆さんも安心して浴室の床をびしょ濡れにしてみてね!
失敗から学ぶ教訓
閑話休題。なぜここで失敗例を持ち出したのでしょうか?
それは、失敗から学べることの方が、常に成功から学べることより大きく重要だからです。学校では教えてくれませんしテストにも出ないけれど、大切な人生の教訓。
バスタブの外に出されたシャワーカーテンは、風に巻き上げられてカラダにまとわりついてくることがありません。それどころか、しっかり固定されて水ハネも防いでくれているようだったのに…。
どうしてこんな風になるのでしょうか?
水のり効果にご用心?
それは、バスタブの側面とシャワーカーテンの間に水が入り、“のり(接着剤)”みたいに働いてピタッとくっつきカーテンを留めておいてくれるからです。わざわざカーテンの端に思いものをくくりつけなくても、水さえあればピタリと止めることができます。
これまたよくある失敗の一つ。
この場合、バスタブ内からシャワーカーテンを濡らしてもほとんど効果はありません。はじめてのホテルによくある失敗例で見た通り、シャワーカーテンとバスタブの側面壁との間に水がなければ、水による接着効果は得られないからです。
水はシールにはならないけれど、のりにはなる。ここ、テストに出ます。
つまり、シャワーカーテンがまとわりついてきてうっとおしいなら、まず、シャワーカーテンをまくり上げ、カーテンに接するバスタブ側面にのりを塗ったくるようにシャワーをかけること。
壁面とカーテンがくっついたら、さらに内側からお湯をかけてピッタリと貼り付けます。
これだけで、フワリ浮き上がるカーテンを効果的に押さえつけることができると思いますよ!
ちなみに
バスタブの外側にシャワーカーテンを垂らしちゃう失敗例で見た通り、「しっかりとカーテンが固定されていたように見える」のも、「まとわりついてきたカーテンが身体にピッタリくっつく」のも、この水のり効果のおかげ(せい?)です。
汗をかいた髪の毛がピッタリ肌にくっつくのも、開けづらいレジ袋が指を濡らせば簡単に開くのも水のり効果のおかげ。うまく応用すれば、様々な場面で活躍してくれるかもしれません。
効果とは何か?
どうしてプラセボ(偽薬)屋さんのブログでシャワーカーテンについて書いているのかよく分からないかもませんが、「シャワーカーテン効果」なる俗称が、プラセボ効果と何らか関係があるのではと思って調べてみたのが発端です。
効果とは何か?
それは、とある現象を観察した際に創造される説明原理です。たぶん。トランプの七ならべにおけるジョーカーみたいなものです。たぶん。そこに実体があるやないや、想像したり議論するのが楽しいのです。たぶん。
自宅がユニットバスの方は、次にお風呂に入る時。そうでない方は、ビジネスホテルに泊まる機会などに一度シャワーカーテンを浮き上がらせて“効果”を実感してみてください。
幸か不幸か、当記事のせいで「冷たいシャワーカーテンがピッタリまとわりついてきちゃってさー」といった類のあるある失敗談義に加わることが出来なくなるのですけれども。