生理の時にのどが渇く女性や、妊婦さんの起床時の口渇感について調べている方はたくさんおられます。
- 生理の時期に普段とは違う水の飲み方をしている
- 妊娠が確定する前段階の超妊娠初期における妊娠兆候として喉が渇きやすい
- 妊娠中期あるいは妊娠後期の便秘と口渇感が気になる
原因が気になって調べてみるうち、女性特有の生理的なメカニズムが「喉の渇き」を引き起こし、また同じ機構によって「便秘」にもなるのではないか、そんな風に思われてきました。
どちらも水利用の優先順位が関係しているのではないか、と。
便秘の男女差に関する調査
日常的な不快感を引き起こすベンピについてはよくよく調べられており、様々な事が判明しています。特に、年齢と性別に関してはほぼ確定的な結果が出ているよう。
乳幼児、小児には便秘の訴えが極めて少なく、あっても男女差はほぼなし。
思春期を迎える頃からは圧倒的に女性が便秘になりやすく、20-30代女性の半数に便秘の経験があるとも。顧客ターゲット層を明確にした某製薬会社の便秘薬TVCMでも、出演者は軒並み20-30代の女性ですね。
60代を過ぎると男女ともに便秘の訴えが多いが、男女比はトントン。
こうした結果から、便秘については女性ホルモンの関与が指摘されています。
プロゲステロンの生理作用
思春期・成人女性の卵巣の黄体から分泌されるプロゲステロンは、女性らしさを生み出すもととなる女性ホルモンの一種です。
生理時には着床の準備・維持のため、また妊娠時には妊娠の維持のため分泌されるプロゲステロンには、体内に水分を吸収・保持する働きがあります。
受精卵・胎児の生育に不可欠な水を蓄えるためです。
この時、外から摂りいれた水の大部分はうんち形成器官である大腸から吸収されるため、うんちを柔らかく保っておくために必要な水分さえも妊娠の準備・維持のために取り込まれてしまいます。
うんこ製造中の大腸さん
着床準備中のプロゲステロンさん
うんこ製造中の大腸さん
女性の体内では、ホルモンの作用により水利用の優先順位がくるくると変化するようです。
なお、便秘体質の方が妊娠を契機に快便になったという話もありますので個人差も。
喉の渇きとの関連も
「喉の渇き」という軽い不快感は、体内の需給バランスが需要側に振れたサインです。
ある部分で水の需要が増大し体内に保持していた水だけでは供給が間に合わなくなると、外から補充するために「喉の渇き」という感覚が起こされます。
感覚自体は異常でも何でもなく、全く持って正常で、しっかりと体内の水分需給バランスを感知できていると考えてよいでしょう。
生理の時や妊娠中には下記の作用に大量の水が投入されるため、普段より多くの水を外から求める必要がある結果、いつもより喉が渇きやすくなることがあるようです。
- 子宮内で組織が急速に形成
- おっぱいが張る
- 肌が瑞々しく艶っぽくなる
- 熱っぽくなって血管容量が増える
- なぜか鼻水がダラダラと溢れる
喉の渇きを感じたら、要求に従って潤してあげましょう。イオンバランスを考慮した経口補水液という選択肢もありますが、砂糖が多く含まれる清涼飲料水以外であればなんでもよくって、水が一番かもしれません。
体内に生命を宿すことは、必然、母なる海を胎内に形成・維持することと言えるでしょう。それはそれで大変なお仕事ですが、わたしたちのカラダにはそれをこなす神秘的ともいえる働きが備わっていると考えて間違いありません。
喉が乾いたら、水を飲む。
それが一番大事なことのように思われます。寝ている間にノドが渇いてしまうのなら、予め寝る前に適量を蓄えておくのも良いかもしれません。
タンパク質を意識的に摂りいれて
生理や妊娠時には平常時よりも多くの栄養素が必要になります。体内に新たな組織・生命を急速に作り上げるのだから、足りない分は外から補ってやらなければなりません。
特にタンパク質は身体をつくる必須の栄養素ですが、妊娠適齢期の女性の身体にとって何にも増して重要な子宮内の準備のために優先的に使われてしまいます。
もちろん。
実は血液中に含まれる「アルブミン」というタンパク質は水分の保持という大きな役割を担っています。摂りいれた水分を体内および胎内に保持できなければ、尿として外に捨てるしかありません。
体内に保持できる水分量を増やして予備的な水分をキープしたければ、いつもより多くのタンパク質を食事から摂りいれることを検討してみましょう。
便秘対策法
子宮方に水を奪われた大腸さんにとって、いつもより多めに摂取された水分は恵の雨となります。
また平常時に便秘薬で頑固な便秘を押し出している方も、妊娠となれば赤ちゃんへの薬の影響が心配されますので、できるだけ便秘薬に頼らず出す方法が求められています。
適正量の原材料を補充
食物繊維を摂り入れると、出るものの嵩が変わってきます。食べたものが形を変えながら出ていくわけで、食べる量が少なすぎると出るものも出ないということになってしまいます。
食物繊維がいいのは、化学構造上、水と仲良しになりやすく、水分を奪い取られにくいということもあるかもしれません。
またごはん・パン・スパゲティなど炭水化物を減らすと便秘になったという事例は以下のような仮説的解釈ができるかもしれません。
うんちの3分の1を占めると言われる腸内細菌は炭水化物・糖分を分解して取り込み、自らのカラダを創りあげ、仲間を増やします。このとき、細菌がその細胞内および細胞壁に保持する水分は人体へは取り込めないため、結果的にうんちに水分を与えることになっている。
とはいえ妊娠中にはかなりの食欲を発揮するそうなので、原材料不足はあまり問題にはならないかもしれません。
適切なウンチング・スタイル
排便時の姿勢であるウンチング・スタイルは、排便の成否や便秘改善と大きくかかわってきます。腹筋に力を入れてうんちを力づくで押し出したり、捻り出したりするのではなく、スルッと流れるように出て行っちゃうのが理想形。
ウンコロジー・イノベーションは、和式トイレから。
このスタイルと「天井を見上げながらするとスッキリ出る」という俗説の合わせ技で、快適なトイレ・ライフをご満喫ください。
やっぱり水分補給も
喉が渇いた時には、プロゲステロンの作用により既に大腸からも幾分かの水分を搾り取られ、それでもまだ足りないから外からも摂り入れようとしている状況だと考えられます。
そうなる前、うんちが固まってしまう前の段階で少量でもこまめに水分を補給できれば、便秘解消には繋がるやもしれません。
あるいは、イギリスにある古くからの言い伝えを現代日本に蘇らせてみましょう。
An apple a day keeps the doctor away.
(リンゴ一個で医者いらず。)
水分も食物繊維も摂取できるリンゴを一日一個摂り入れてみてはいかがでしょうか?
水配分の優先順位
生理時にも、妊娠中も、女性の身体は子宮を中心に水を分配するシステムを持っていると思われます。
万が一にも胎児が水不足とならないよう母体に水分を保持し続け、うんちがどうなろうと深くは考えない。
おそらく、海を出た生命が乾燥に強いと言われる卵生を捨て、胎生の動物、すなわち哺乳類を生み出す進化の過程で母体内に海を創り出す画期的なシステムを完成させたのでしょう。
「出すって、大切。」ですけれども、うんちが必要以上に固くなっちゃうケアレス・ミスくらい見逃して、この生命の神秘に満点花丸、たいへんよくできました、をあげたいと思います。