フレイルとは?高齢者の要介護・要支援化は降圧剤を飲み過ぎる高血圧治療のせいかも

高血圧は脳卒中や虚血性心疾患、腎障害を招くことため、異常な高値を示す場合には血圧を下げる薬剤を投与して血圧をコントロールします。

しかし、ここにはある種の過大解釈が介在することになります。

降圧剤の効果とは、文字通り血圧を下げること。この効果に関しては医学的に臨床的に証明されています。

しかし、降圧剤を使用して血圧を低下させた時に健康寿命が伸びたり主観的な生活の質が向上したりと言った効果はあるのでしょうか?

「そのような効果の証明はない。いやむしろ逆効果となる可能性もある」というのが今のところの答えであるようです。

週刊誌の報道

2015年12月10日号の『週刊文春』において、『降圧剤が「要介護」を招く』と題する記事(トップ写真)が掲載されました。

血圧低下リスク

記事の副題は「血圧120未満でリスクは3倍以上に。脳梗塞の危険もアップ!」というもの。

金沢医科大学高齢医学講座の医師によってなされた、石川県内灘町に住む高齢者(65歳以上)の検診結果に基づく研究から導かれた結論です。

記事内で引用中の公表された論文はこちら »

現在の基準では「血圧140 mmHg以上」が高血圧と診断されますが、実は「140~160」の数値であった人が最も要介護・要支援になりにくいことが分かりました。

基準を満たすようにと高齢者の血圧を下げ過ぎるとよくない。むしろ高めの方がいい、というわけです。

血圧はなぜ高い?

年齢を重ねた老人の血圧がなぜ高いか?という問題は非常に複雑で、複数の要素が絡み合っています。

しかし、身体は血圧を高める必要があって高めている、自律的に調節しているのだ、と目的的に答えることは可能でしょう。

血圧とは、血流を全身にめぐらす力のバロメーターです。必要があって高めているのに、くすりを使用して無理に下げてしまえば不都合も起こり得ます。

現に、要介護・要支援と判定される状態になってしまう原因をくわしく見てみると「転倒・骨折」は血圧160以上の人にその割合が高く、逆に120以下の人は「脳卒中」のために自立した生活を送れなくなる傾向がありました。

脳卒中を引き起こすとされた高血圧、その治療のために下げ過ぎた血圧が脳卒中の原因となってしまう。

これは、高血圧によって維持されていた脳への血流が降圧剤の効果によって低下し、脳血管が詰まって脳梗塞を引き起こしやすくなるためだと解説されています。

降圧薬による血圧の下がり過ぎに警鐘を鳴らす医師がいるのは、高齢の血圧患者を数多く見た所見がこうした研究成果とよく合致するためです。

薬を止めて笑顔が増えた?

高血圧の薬の他、抗認知症薬、肝機能障害薬、痛風治療薬、痛み止めなど8種類の薬を処方されていた80代の女性は、歩行は困難、会話すらままならない状態で医師による在宅診療を受けたところ最高血圧が「118」となっていることがわかりました。

医師や優先順位の低い薬を徐々に減薬してゆき、ついには降圧薬も断薬させましたが、血圧は「120~130」で安定するようになったといいます。

介護者の視点から

女性の介護に付き添った娘さんのお話。

「入院する前からですが、母はいつも疲れている感じで、言葉や表情に乏しく、歩き方もふらふらしていました。
ですが、薬をやめてからよく話し、よく笑うようになりました。入院前よりも元気になった印象です。

因果関係ははっきりしませんが、不必要な薬をたくさん飲んでいたことも影響していたのではないかと感じています」

過剰介護が自立心やADL(自立生活動作)を奪って本人の能力を失わせるように、過剰医療・過剰投薬もまたその人の自律的な生理的調節機能を奪っているのかもしれません。

降圧剤に関しては長年、場合によっては数十年も漫然と飲み続け、自然の老化現象である体質の変化に対応しきれていない例があるようです。

医師にヒマなし

医師は日常的に忙しく、医療行為がもたらす患者への影響に無頓着な場合があります。

「白衣高血圧」のような日常の状態とは異なる検査数値に基づき医薬品を処方する例も少なくありません。これでは適切な治療が施せようはずがないでしょう。

また「医原病」とされるような医療行為によって引き起こされる不調を患者が訴えると、介入的治療の不足だと短絡しさらなる服薬をすすめるなんてことも。

誰も、と言うと言い過ぎですが、医薬品開発・販売・処方・使用に関する多くの人は「くすりをやめる」ことに非常に関心が薄いものです。

だって、クスリなんて飲んでもらってナンボでしょ?

残薬があるなら減薬を

残薬の原因を、患者本人の服薬コンプライアンスに対する意識の低さに帰するのは医療の怠慢です。

これからは、病院・薬局経営視点からは嫌われ、製薬企業からも嫌われようとも、患者さんの状態に応じて薬を減らす、あるいは医薬品の必要性を吟味することのできる医師・薬剤師が必要とされるでしょう。

将来的には、「卒薬」の視点が重視されるはず。

いやそもそも、高齢者に医薬品を処方すべきなのか?そんな議論があるようです。

注目される「フレイル」とは?

ここで、以下のチェック項目をご覧ください。

  1. 体重が減ってきた
  2. 歩く速度が遅くなる
  3. 筋力が低下した
  4. 疲れやすくなった
  5. 活動量が低下した

いくつあてはまるでしょうか?

75才以上の後期高齢者で3項目以上当てはまると、「フレイル」の疑いがあるそうな。

慎重な投薬判断を

そもそもフレイル(frailty)とは、「筋力や心身の活力が低下した虚弱状態」やを意味する概念ですだそうです。

が、どうにも「虚弱」と言ってしまうのは健康至上主義的なものにも思われますね。「虚弱高齢者」とか言いますけど、それ、ただの老化&個体差ですよと。死を避けられない動物(人間)のありのままの姿を病的だと捉えているにすぎないと。

ただ、そうした状態が要介護予備軍であるとの考えから、フレイル状態の内に何とか自立生活を維持させたいと試みられているということだと思われます。そうした試みは非常に有効でしょう。

ここで問題になるのは、フレイル状態の方に積極的に投薬すべきか否かです。

答えは、否。

個別判断が要求されますが、積極的な投薬治療は控えるべきだとされています。

降圧剤で認知機能低下も

繰り返しになりますが、血圧とは血流を維持するのに必要なものです。

血圧を下げたことが結果的に脳血流量の低下を招き、脳細胞を栄養失調状態に、ひいては細胞死を引き起こす可能性があります。

現在の医薬事情はたいへん複雑で、素人の手に負えるものではありません。というか、多剤投与の効果や副作用などの危険性については医師や薬剤師にもはっきりしたことがわかりません。

ただ、もし降圧剤およびその他の薬を服用中に何らかの不調があれば、一度お医者さんや薬剤師さんにご相談ください。

プラセボ製薬の考え方

プラセボ製薬では「卒薬」を提唱しているように、薬をやめることについて考えています。

基本的には、後期高齢者とされるような75年以上もの長き人生を歩んでこられた方の生身のカラダには生きる力がそなわっているはずだ。

医療や医薬品が彼ら彼女らにできることは、生きる力を阻害しないことだけであって、カラダの意に反し血圧を下げるなど強制的な生理機能の調整、生体機能に対する擾乱は不要である。

したがって、薬のない生活および死が最上級の治療目標となる。血中薬物濃度ゼロでの死亡を目指す。

プラセボの使い方

じゃあ、そもそも高齢者に対して、特に生活習慣病とされる慢性病治療薬など何らかの医薬品の投与を始める際には、一定期間プラセボ(偽薬)で様子を見るという手法があり得るのではないだろうか?

プラセボ効果は、実践的な応用が可能なのではないか?

ということをも将来的には視野に入れつつ。