ホット?アイス?飲料温度と眠気覚ましの有効性

コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどカフェイン摂取で眠気や睡魔をおいやり、なんとか勉強や仕事をこなそうとしている大人たち。

カフェインを含むエナジードリンクの大量摂取では日本でも死亡例がありますので飲み過ぎ・過剰摂取には注意したいところ。

ただ、如何せんその効果が頼りないこと頼りないこと。

睡魔との戦い方

コーヒーを飲んでも眠いなら潔く眠ってしまおう!と昼寝制度の導入が推奨されることもありますが、そうも言っていられないのが現代社会の辛いところではありますね。

就業時間に寝ている = サボっている

そんな価値観はまだまだ根強く残っています。仕方ない。そんな場合には現実主義的な対応策を検討するしかありません。

紅茶やコーヒーでホッと一息?クーゥと一杯?

カフェインを含む飲料の代表格、コーヒー、紅茶、緑茶。こうした飲料を温かいホットで飲むか冷たいアイスで飲むかは、個人の趣味趣向や季節・室温・外気温的な要素が絡み合って決定されます。

寒いからこそのアイス!とか、夏でも冬でもオールシーズン、ホット!とか、本当に様々ですよね。

最近はエナジードリンクの流行と市場拡大で炭酸飲料に加えられてカフェインが出回っていますが、こちらは炭酸飲料の常でよく冷えたコールド状態のものを摂取することが多いはず。

「ホット」か「アイス」か。

「あたたか~い」か「つめた~い」か。

好みで選ぶのもよいでしょうが、眠気覚ましとしてどちらが優れているか考えてみるのもまた一興。もし、どちらかに優れた眠気覚ましの効用があるのだとしたら…。

というわけで、少し回り道しながら考えてみましょう。

カフェイン(caffeine)について

カフェインが脳に効くって、本当?

さてカフェインの効果と言えば、覚醒効果

脳のアデノシン受容体に拮抗的に作用することで中枢神経を興奮させ覚醒作用を発揮するとされていますが、その効果の曖昧さから「そんなのプラセボ効果である」との批判が絶えません。思い込みで効いてるだけだよね、と。

現実主義的視点から見れば、どうも脳への作用は、あったとしてもマイルドなようです。

カフェインは血管に効く

もう一つ、カフェインのあからさまな効果があります。

利尿作用です。水分を摂ったらおしっことして出さないといけないのはわかりますが、どうもカフェイン飲料は水分を絞り出す効果があるようです。飲んだ以上に出ていく。

この点、お酒(アルコール)に似ているかもしれません。

ただ、その作用自体は全然違っていてアルコールがおしっこ製造を抑える抗利尿ホルモンの仕事を邪魔していっぱいおしっこを作らせるのに対し、カフェインは血管を縮ませることで体内の水分を余らせる働きがあります。余った分は外に出しましょうね、と。

  • アルコール:抗利尿ホルモンの抑制
  • カフェイン:血管収縮(※)

※インターネット上では「カフェインは末梢血管(腎臓)を拡張して利尿作用」との説明があります。が、実感としてはコーヒーを飲むと手先・足先が冷えるんですよね。手足の毛細血管が収縮したことにより体熱の移動が抑制され、冷えを感じるのではないかと考えていますが、これは仮説ということでご承知おきください。

どちらかと言えば中枢(脳)よりも末梢(血管)への作用の方がハッキリしている印象。

現実主義の視点に立つならば、こちらをメインに据えてみようじゃないか。血管への作用から眠気覚ましに最適なカフェイン摂取法を検討してみましょう。

生体水利学の視座

生体水利学という学問分野は特に一般的でもありませんので、「ココだけの話」としてお聞きください。

本ブログを運営するプラセボ製薬株式会社では、「プラセプラス」というプラセボ食品を薬を飲みたがる高齢者向けに販売していたり、プラセボ効果の有効利用を検討したりしています。が、どうもプラセボ効果と「○○気」は相性が良いように思われます。

逆に言えば、肺炎とか脳卒中とか心筋梗塞とか癌とかはっきりとした病因についてプラセボ効果が関われる場面はそれほど大きくなく、元気や勇気、眠気など気分に関わることなら何がしかを変えられるかもしれないと。

さらに、気分とは血流である。抽象的に言えば、生体内での水の利用が気分を左右する大元なんじゃないかと現在では考えています。

能書きはこの辺にして、眠気の水利学について少し。

眠る時、血管は広がる

人は眠るチカラを持って生まれてきます。

その力は、末梢(手足)の血管を拡張し、身体の深部にある温かな血液を流し込むことで体温を下げようとする自律神経の働きに基づいています。

眠る時には体温が下がる。逆に言えば、体温が下がらなければ人は眠れないのでしょう。冬山での遭難時に眠気が危険なのは、眠っちゃうと貴重な体温が外部に捨てられてしまうためです。

体内を巡る血流量を増やしてやるために眠気が起こるのか、既に血流量が増えたから眠気が起こるのかはわかりませんが、とにかく眠気と血流の関係については「手足に血を流せば眠くなる」と考えられます。

ということは「眠気覚まし」の神髄は、血管容量を増やして熱移動の効率を上げ眠りに入ろうとする身体作用の阻害に他なりません。

身体の声は聞こえるか?

冷えは身体にとって非常な脅威ですので、冷たいものを摂り入れると必死に温めようとします。ひどい場合に下痢という発熱機構を作動させるほど。

つまり、手足の血管を収縮させて熱が逃げてしまわないようにするのです。

眠気が起こる場合とは逆の作用になりますので、もし「眠気覚まし」を極めようと思うなら適度に冷たいものを摂り入れて刺激を与えてやるのが良いでしょう。

逆に、温かいものを飲むと水利学的にどうなるかを考えてみましょう。

基本的に恒温動物である人は一定の体温を保つことしかできません。将来の寒冷刺激に備えて熱を熱エネルギーのまま蓄えておくことはほとんどできないのです。

したがって、体温以上に温かいドリンクを飲んでも採り入れた熱は外へ出してやるしかありません。つまり、血液に熱を載せて末梢へ運び込むために血管を拡張させるのだと考えられます。これは「眠気」を起こす場合の身体の作用と同じこと。

さぁ段々と見えてきましたね。どうすれば適切に眠気を覚ますことができるのか、が。

アイスで飲む、カフェイン飲料

眠気や睡魔を追いやるには「ホット」が良いのか「アイス」が良いのか。「あたたか~い」が良いのか「つめた~い」が良いのか。

この問題の答えは、「アイス」であると言えそうです。

ホットは拮抗的

カフェインを摂取した時の末梢血管収縮はホットだろうがアイスだろうが変わりません(たぶん)。

でも、ホットのときの熱エネルギーについては血管を拡張して捨てるしかありません。

つまり、収縮と拡張が同時に必要とされるわけで、相殺したり打ち消したり、はたまたタイムラグでどちらかに振れたりと体質によってその作用の現れ方に個人差はあれど、相乗効果はなさそうです。

アイスは相加・相乗的

反対に、アイスの場合には熱エネルギーを身体から奪い、寒冷刺激に対する防御反応を起こさせるので血管は収縮します。

これはカフェインの血管収縮作用と相俟って相加的に働くと考えることが出来そうです。

つまり、眠気を覚ましたいなら「アイス」で飲めと。

コーヒーも紅茶も緑茶も烏龍茶も、もちろんエナジードリンクだってキンキンに冷やした方が「眠気覚まし」には効果的だよね、と。

そんなことが言えるんじゃないかと思います。

眠気覚ましのお作法

眠気覚ましにはカフェイン飲料を飲む以外にも様々な方法が提案されていて、「冷たい水で手を洗う」、「冷たい水で顔を洗う」などが一般的。「(ほっぺたや腕を)つねる」なんてのもありますが、それはさておき。

寒冷刺激が眠気を吹き飛ばす…は言い過ぎかもしれませんが、ちょっと脇へ追いやるくらいの事は誰しも経験があるのではないでしょうか。

それも、血管を収縮させて体温を逃がそうとする身体の働きを阻害しようとする試みだと考えることができます。

冷たい「水」でよくない?

もちろんコーヒーや紅茶などの嗜好品を楽しむために飲む方がその楽しみを追求されることについて何ら言葉を差し挟むことはできませんが、「眠気覚まし」というその一点で求められる方々おいてはカフェインは補助的な、サプリメント的なものと考えても良いのかもしれません。

メインに据えるのは「冷たい水」の効果で良いじゃないかと。キュッと血管を締めてくれる寒冷刺激さえあればいいじゃないかと。「冷え」対策で冷たいものは口にしない方もおられますが…。