何らかの言葉について実際に何を指し示しているのかを見極めるのは、一般に考えられているほど簡単ではありません。
例えば、「気分転換」とは何でしょうか?
そりゃ、読んで字の如く「気分」を変えることでしょ。
じゃあ、「気分」って一体ナニ?
気分の話
かまぼこやちくわなど練り物メーカーさんの話でないとすれば、「気分」について明確な定義は結構難しいものです。
大辞林によれば、
きぶん【気分】
大辞林
- その時々の漠然とした心・気持ちの状態。
- からだの生理的な状態に応じて起こる,快・不快などの心の状態。気持ち。
- その物事に対してだれもがもつ,特有の心の状態。
- 〔孔子家語 執轡〕 気質。気性。
- 〘心〙からだの生理的な状態と密接な関係をもつ,比較的弱く長時間持続する感情の状態。
そもそもが漠然とした概念である「気分」。更にこれに変化を加えようとする「気分転換」。
あんまりスッキリ説明付けることのできない気分転換をうまくこなすには、視点を変えてみるちょっとしたコツが必要なのかもしれません。
気分を変えてくれるもの
言葉本来の意味が不明瞭なとき、実際には何を持ってその概念を指し示しているのかを現実的に見据えてみるのが有効です。
嗜好品
例えば嗜好品は、一般に気分を変えてくれるものと認識されています。
- コーヒー
- 紅茶
- タバコ
- お酒
- お菓子
趣味的なものまで加えればさらに話は広がりますが、取り敢えずは喫味、喫煙に限りましょう。
風味や香りを楽しむ。
またそこに含まれるカフェインやニコチン、アルコール、糖分など化学物質の作用を期待する。
カラダの何か(≒気分)を変化させるこれらの嗜好品は、有効に気分転換を実践するうえで一つのヒントになります。
深呼吸
同じように、気分転換の方法として採り上げられることの多い深呼吸。
空気を胸いっぱいに取り込みまた吐き出すその行為は、やはり身体の何か(≒気分)を変化させてくれるでしょう。
酸素を採り入れ、二酸化炭素を排出する。生命現象の根幹をなすこの生理的行為にも、気分転換のヒントが隠されているはず。
散歩
さらに、気分転換の主役を張る散歩。
軽い全身運動である散歩もまた、我々の内にある何か(≒気分)を確実に、テキメンに変えてくれます。
ここにもやはり、気分転換の秘訣が潜んでいると考えてよいでしょう。
気分とは血流のこと
さて、結論から申しあげましょう。
気分とは、血液の流れの事ではないでしょうか。
嗜好品の飲食、深呼吸、散歩などの全身運動。これらはどれも、我々の体内に血流の変化を引き起こします。
上記で繰り返し「何か(≒気分)」と書きましたが、実はこれを「血流」と読み替えてもすんなりと意味が通るはず。
なぜか?
だって、血流こそが気分だから。
気分転換とは、血流を変えてやることなのだから。
血は巡り、滞る
人間はその活動の全てを血流にコントロールされています。全ての経済活動がマネー(お金)に支配されているように。
しかし、複雑な生命現象の全てを完璧にコントロールすることは不可能なため、所々で調整が必要になってきます。
例えば、座りっぱなしでデスクワークをしているとしましょう。
脳の言語やを駆使して文章を追い、情報処理の後に別の文章としてアウトプットする。その際には脳みそとキーボードを打ち込む腕や指に優先的に血液が回されることになります。
ただし、腰から下は疎かに。
血流が滞った足は、漠然とした不快状態を訴え始めます。これが、「気分」です。
またもっとミクロな目線で物事を眺めてみれば、脳内と言う局所の血流をも考慮することが出来そうです。
画面を見つめるそのとき、視覚を司る脳部位へ優先的に血液が回され、聴覚に使用される部分の血流は滞っているのかもしれません。
気分転換の要諦は、このアンバランスを解いてやることになりそうです。
血管は自律神経に支配される
さて、気分転換が血流バランス調整だとすれば、「うまい気分転換」とは適切な血管伸縮の調整に他なりません。
健康に関心のある方なら、交感神経や副交感神経という言葉を聞いたことがあると思います。
これを総称して自律神経系と言いますが、血管の内径を縮めたり拡げたりするのが自律神経系の大きな役割になります。
ただし、自律神経を自覚的に、意識的に働かすことは(一般的には)できません。何らかの代替行為によって働かせてやるしかないのです。
血管締め上げ系
コーヒーを飲むとカフェインの作用により血管が収縮します。また同様に、煙草を吸うとニコチンの作用により血管が収縮します。
冷たい炭酸飲料や清涼飲料水を飲んでも、その冷たさという特質によって血管を収縮させることができるでしょう。
さらに、冷たい水で手や顔を洗ってみたり。
血管を締め上げてやることで、血流は如実に変化します。
血流を変えることは、すなわち気分を転換することに他なりません。
血管ゆるめる系
逆に、深呼吸をすると採り入れた酸素を全身に送り届けるために血管が広がってゆきます。
栄養のある甘いお菓子を食べたり、温かいものを食べるときにも栄養素や熱を全身に運び込むため血管は拡張されるでしょう。
全身運動やお風呂に入っても、やはり血管は拡げられます。
血管を押し広げることでも血流は確実に変化し、気分が変わってきます。
実践あるのみ
誰にも有効な気分転換の方法はあるのでしょうか?
残念ながら、そのようなものはないと思われます。状況や各個人の特質などによっても異なってくるはずなので、自分の責任で実験を繰り返しうまい方法を見出すしかないのでしょう。
唯一コツと言えるものがあるとすれば、「気分」を変えるよりも「血流」を変えることを意識した方が具体的な処方箋を描きやすいという事実を頭の片隅に置いておくことでしょうか。
何となく落ち着かない「気分」のときには脳に血が巡り過ぎていると解釈し、「血流」を変える血管締め上げ系の嗜好品を試してみる。
「気分」が沈んでいる時には「血流」を増す血管緩める系の行為を試してみる。
もちろん巧くいくこと、いかないことがあると思われますが、何とも掴みがたい「気分」を抱えて動けないでいるよりも「血流」に着目して転換を図ってみること。しかもそれを具体的に行動として実践してみること。
漠然とした「気分」に関する悩みは、「血流」へと視点を移し替えることでいくらか解消されるように思われます。
ことば遊び
もっと深く探求して見たくなったら、日々目にする「気分」を「血流」に置き換えてみましょう。
気分爽快、気分障害、気分変調症、気分屋さん、気分が悪い、気分が良い…。
どこまで言い換え可能か考えてみるとより考察が深まり、気分転換の極意が見出せるかも?