プラセボ製薬では、みなさまの「試してみたい!」の声にお応えして「プラセボ実験」を奨励しています。しかし、実験を行う上で注意して頂きたいことが1つだけあります。
それは、「プラセボ効果が現れることを前提としない」ことです。
どういうことでしょうか?
プラセボ効果は、いつでも誰にでも現れるわけではないのです。
プラセボ効果を前提としたら…
先入観は無感動を生む
プラセボ効果はもともと、有効成分が何も入っておらず、効くはずがない偽薬を服用したときに、なぜだかわからないけれど確かに現れる効果として発見されました。
大きな大きな、驚きとともに。
しかし今では、多くの人がプラセボ効果の存在を認めています。プラセボ効果が目の前で現れるのを見たって、あんまり驚かないかもしれません。
効果への期待
また「プラセボ実験」を行うのだから、プラセボ効果が出てくれなきゃ困るという気持ちもあります。
このような態度は、プラセボ効果を前提としてしまっている点で間違っています。
プラセボ効果を前提としない
現象を真摯に見つめる
では、実験者のあるべき態度はどのようなものでしょうか?
それは、観察を大事にする態度です。
目の前で起こっていることを真摯に、できるだけ偏りなく対象を見つめ続けることです。
プラセボ効果なんて知らなかったという態度で、臨むべきだと思います。そうしなければ、あなたの勝手な思い込みが、観察や実験結果を歪めてしまうからです。
観察って何だろう?
そもそも、観察って何でしょうか?興味ある対象を見て、特徴を記述すること?学校で習うのは、こういったことでしょうか。
でも、もう少し広く捉えてみましょう。
見る、だけじゃない。物事の本質を理解しようと興味ある対象と接する中で、あなたが感じたことの全てが「観察」です。実験を行う人、すなわち研究者にとってはこの「観察」を一番大事にしなければなりません。
あなたの「観察」は、教科書で得た知識や、偉い人の意見や、お父さんやお母さんの言葉や、世間の常識よりも優先させなければなりません。
あなたの「観察」に反する証拠を挙げられたとしても、簡単にあなたの「観察」をねじ曲げてはいけません。研究者とは、孤独な稼業なのです。
観察こそすべて
「プラセボ実験」においても、同様です。目の前で起こっていることを「観察」し続けてください。
プラセボを飲んだ人が、確かに何らかの変化を感じているようだぞという「観察」が得られて初めてあなたはプラセボ効果を認めたことになります。
もし、何だかよくわからないのであれば「プラセボ効果なし」と観察ノートに記述したって全然構わないのです。それは、実験の失敗を意味しません。
まとめ
大切なことですので繰り返しましょう。「プラセボ実験」を行う上で、プラセボ効果を前提としてはいけません。
プラセボ効果は現れるときには現れるし、現れないときには現れない、気まぐれで恥ずかしがり屋のお友達です。
しっかりと「観察」が出来ていれば、正直になることをためらう必要はありません。なければ「ない。以上。」で構わないのです。事実をねじ曲げて得られた研究結果は価値がないどころか、害ですらあります。お気を付け下さいね!
おまけ:メタ・プラセボ実験
以下の記載は少し難しい内容になりますので、わからなくても全然構いません。
「プラセボ実験」を行う人の勝手な思い込みが、実験にどのような偏りを生じさせるのか、という高次の結果分析・考察を考えることができます。
複数の実験報告や結果から、新たな高次の知見を得る試みを「メタ解析」と言ったりします。意欲のある方はどんな「メタ解析」ができるか、考えてみるのも面白いかもしれません。