「医療費が増えている」というニュースが度々話題になります。実際、医療費は増えています。
40兆円という大きな金額で、あまり想像力の翼を広げることができないほどに実感とはかけ離れた数字になっています。
ここでは、医療費の総額だけではなく医科・歯科・調剤・訪問看護療養の診療種類毎に分けた医療費の推移を確認することで、より想像力を刺激するようなグラフを提示します。
診療種類別の医療費推移
先ほどの棒グラフを、診療種類別に色分けしてみましょう。すると、大部分が「医科診療費(青色)」であることが分かります。
もう少しそれぞれの推移が見やすいよう、折れ線グラフも示します。
さてこのグラフから何が読み取れるでしょうか。少額のものから見てみましょう。
「訪問看護療養(桃色)」は若干の増加があるものの、全体からみればほとんど地を這うような推移となっています。
「歯科診療費(橙色)」はここ20年間、2~3兆円のあたりでほぼ横ばいを続けています。
「調剤(緑色)」は2015年まで増加し続けていますが、それ以降横ばい、あるいは減少している様子がうかがえます。
「医科診療費(青色)」は急速に伸び続け、今後も伸長が見込まれます。調剤のような、ある年を境とした伸び率の数年に及ぶ変動がほとんど見えてきません。
今後の見通し
医療費については高齢者人口の増加に伴う“自然増”が見込まれています。高齢になればなるほど一人当たりの医療費がかさむ傾向があるためです。
ここまで見てきた「医療費」は自費診療を除いた「概算医療費」です。医薬品等の価格を国が定める薬価制度などがある通り、概算医療費の推移は公的・政治的な争点となる性質があり、医療費の伸びをどれほど食い止められたかが財務省や厚生労働省のアピールポイントとなっています。
高齢化がまだまだ続く中、医療費の高騰を抑えつける有効策は乏しく、上で見たように「調剤」の伸びを止めるなど、これまでの流れを汲んだ対策が今後もしばらくは取られるのではないかと考えられます。
病院経営主体、医師団体、薬剤師団体、歯科医師団体、看護師団体、その他の医療関連団体など、医療費が利益に直結するそれぞれの主体を代表する組織の力関係がこれまでの、あるいはこれからの医療費推移グラフから読み取れるかもしれません。