医療費といえば、高齢化に伴う医療費の高騰が社会問題として取りざたされがちです。ただ一方で、厚生労働省が公表している「医療費の動向調査」では、一部の資料において「未就学者」という特別な項目をわざわざ用意してその経年変化を掲載しています。
子どもの医療費に関しては大きなニュースとして取り扱われることがほとんどなく、どのように支出されているのか知る機会はあまり提供されません。ここでは小学校入学前の未就学者の医療費推移を図示してみることでその機会を提供します。
医療費の推移
医療費全体を灰色で、医療保険適用となった未就学児童の医療費をピンク色で示したグラフが上図です。未就学者のものは2008(平成20)年以降のみとなります。
医療費全体は高齢化に伴い2000(平成12)年以降、増加し続けています。一方で未就学者の医療費は2008年以降、ずっと1.4兆円程度となっています。増加していないどころか、2019年には1.39兆円となり、2009年以降はじめて1.4兆円を割り込みました。
毎年のように出生数が下がり続ける現状では、未就学者の医療費が低下し続けるのが当然のように思われます。
一人当たり医療費の推移
次に、一人当たりでみた医療費の推移を確認してみましょう。
灰色の線で示された全体の傾向からは、一人当たりの医療費が伸長し続けていることが読み取れます。
一方で桃色で示した未就学児童の一人当たり医療費は、やや増加傾向にあるものの、全体の増加ペースと比較して緩やかになっています。
未就学者に対する医療費は一人当たり医療費の増加で相殺される可能性もあり、先ほど「当然」と述べたものの、必ずしもそうなることは保証されません。しかし、実際に一人当たり医療費の増加ペースが緩やかであることが確認できればその蓋然性は高まります。
未就学者の数が減少し、一人当たり医療費があまり増えない結果、未就学者の医療費全体は下がり続けている。
この見立てに間違いはなさそうで、この先数年の傾向もこれを継承するものと思われます。