認知症のBPSD対応にストレスを感じたら偽薬で気分スイッチ法

生きている以上、ストレスを感じなくすることはできません。

しかし、役割を演じることで減じることのできるストレスがあります。

BPSD対応モードへのスイッチ

多くの介護家族にとって認知症との出会いは突然、そして幾分悲劇的に訪れます。困惑の中でどうすればよいのか分からないままストレスを抱え、介護現場での虐待につながる事例が頻繁に起こっています。

まずは知識を仕入れること。そして、相談できる人や場を探すことに尽きます。

演技モードへのスイッチング

認知症高齢者介護の現場では、介護する側の演技や嘘によって介護される本人の精神世界に寄り添わなければならない場面が確実に訪れます。

演技することやウソをつくことを「だまし」と理解して抵抗を覚える方もおられるそうですが、もう少し柔らかくとらえ、柔軟な対応を心掛けましょう。

もしかすると偽薬(プラセボ)がそうした心構えを補助してくれるかもしれません。

役者や専門の介護職員でもない一般の方がスッと臨機応変な演技を取ることが難しいのは、ある種の気恥ずかしさや後ろめたさが原因となっている場合があります。

そうした精神面での切り替えをうまくこなすアイデアとして、「偽薬を飲んでみる」という方法はいかがでしょうか。

お子さんらにも、モード転換を?

年に数度、入院中や介護中のおじいちゃんやおばあちゃんに孫が会いに来る場合など、子どもがある程度の年齢に達していれば認知症高齢者に感じる何がしかのおかしさに気付き、言動がいつもと違ったものになってうまく対応できない場合があるかもしれません。

家庭内介護で同居中であれば、子どもと高齢者の間には日常的に不和が蓄積されているかもしれません。

小学生くらいになれば、おじいちゃん、おばあちゃんの前で演技したりフリをすることくらいはできるでしょう。聞こえた振り、分かったふり。ちょっとした演技がその場を丸く収めることもあります。

「ウソをつけ、演技をしろ」と子供に求めるのは難しいでしょうが、

これ(偽薬)を飲んで、“ふりふりモード”でお願いね

と言うことならできるかもしれません。

きっかけはちょっとしたもので構いませんが、「偽薬を飲む」など具体的行為を伴うきっかけはモード転換をスムーズにしてくれるはず。

ウソの功罪

騙すこと。これに拒否感を覚える人も少なくありません。

ウソをつかないことを人生訓として生きている方も大勢おられます。

しかし、介護の現場ではそうした固定観念は少々窮屈な対応を強いることになってしまうかもしれません。

ウソやダマシ行為への気兼ねがある場合には「嘘や演技は介護に必要なものだ」と念じながら偽薬一粒、飲み下してしまいましょう。

偽薬が認知症の方と介護者の方のお役に立てましたら、これ以上嬉しいことはありません。

認知症介護の周辺情報

認知症介護については様々な知恵が蓄積し、ケアの方法が実践されていたり、新たな施策が実行されていたりします。

BPSDと水の関係

BPSDの悪化は脱水症状による意識レベルの低下が原因だった…?

近年、大きく見直された介護ケアの方法に「水分摂取」があります。

その重要性は認識されながらも、あまりに基本的過ぎて見落とされがちであった水分摂取について、より多くの水を摂ってもらうことでBPSDが軽減あるいは解消する例が報告されています。

認知症の方に偽薬を飲ませながら、一緒に水分を摂ってもらうこともできるでしょう。

介護ストレスの軽減策を検討する場合、実験的取り組みを採り入れる場面が出てきます。経験者の知恵を借りつつ、自身の環境に合った方法を見つけてみましょう。

介護者への視線

高齢者介護が国民的事業として注目を浴びる中、これまで軽視されがちだった介護者側へのケアが注目されるようになりました。

特に家族が家庭内で介護をすることが増え、被介護者に対する暴力、虐待、ネグレクト、またある場合には殺人幇助や心中といった事件が新聞やテレビで報道されるようになっています。

こうした現状を鑑み、地域社会での高齢者受け容れ策が検討されるようになりました。

その一例が、「認知症カフェ」と呼ばれるもの。認知症地域支援推進員と呼ばれる専門家が各市町村におかれ、認知症の人や介護者が集える場を提供しようという試みです。

もちろん、介護者側の精神的ケアもその目的の一つとなっています。同じような体験をされている方との情報交換、情報共有が密度の高いコミュニケーションを生じ、介護ストレスのケアに一役買っているようです。