冬になり寒さで手がかじかんだり指先の冷えを実感するようになると、指の背の部分が乾燥して白っぽく粉っぽくなり、そのまま放っておくとあかぎれて血が滲んできたりしてとてもやっかいです。
これって、手湿疹?
自分の手肌・指が荒れているのを見るのも気が滅入るものですが、例えばよく行くお店の店員さんの手がひどく荒れていたりすると勝手な同情スイッチが入ったり。
寒い冬場の手荒れが治るのならば、きっと生活は、ひいては人生は今より少しだけ良くなる気がします。
仕事人の憂鬱
もう何年も前に居酒屋のキッチンでアルバイトをしていた頃、ひどい手荒れに悩まされました。
手洗いは頻繁に行うし、アルコール消毒するし、自動食器洗い機はあったけれどどうしても強い洗剤がいくらか手につくし、揚げ物等で粉を使えば手指の油分・水分は奪われ失われるしで肌の弱い人はほぼ確実に手が荒れてしまいます。
荒れた手肌は衛生的でないので、皮膚科で処方されたステロイド配合のクリームを寝る前に塗り込み、指をラップで包んで眠ることにして対症療法的に何とか凌いでみたり。
食品工場勤務、惣菜屋の悩み
食品工場で働いていると、絶対に手洗いの励行とアルコールによる殺菌が求められます。ただ、その必要性は十二分にわかるのですが、手洗いのし過ぎで荒れた手は、逆に不衛生なのでは?
また惣菜屋さん、弁当屋さん、コンビニのレジ打ちの女性・男性の手が荒れていると、清潔感があるとは言い難いもの。
殺菌消毒も結構で食中毒なんか起こすよりは全然いいのですけれども、手荒れ・指荒れがあるとどうしても洗いたくない意識が膨らんできて手洗い等がおざなりになる人間の心理も踏まえた上で、より実務的な、現場に寄り添う対策が必要かもしれません。
手指の保護を優先すれば清潔がおろそかに。こちらを立てればあちらが立たずのトレードオフで、とても難しいとは思いますが。
美容師、理容師、医師、看護師の職業病
職業的手荒れについて調べていたら、美容師さんも染色剤とかシャンプー、リンスの使用などで手荒れがひどくなりやすい模様。
また医療ドラマ等で見るように手術前の念入りな手洗いが医師や看護師の手荒れを促進しているのではないかと考えられます。ラテックス製のゴム手袋にはアレルギー性があるようですし、非ラテックス製でも手が弱い方は荒れてしまうことがあるそうです。
職業的手湿疹の問題は結構根深いようで。
手荒れ原因となるアレルギー
免疫作用が過剰に働くアレルギー症状は、手荒れを生じさせているかもしれません。
寒さアレルギー
寒さに敏感な人の場合アレルギー現象が寒さによって引き起こされること、すなわち「寒さアレルギー」の存在が指摘されています。
実際に寒冷刺激によって、生理学的なアレルギー反応である「ヒスタミン」という生理活性物質の放出が認められるそう。
アレルギー症状として抗ヒスタミン剤(風邪薬、花粉症薬)が効く…かもしれませんが、詳細は医師・薬剤師にご相談のこと。
食物アレルギー
手荒れ等の症状を起こす身近なアレルギーとして食物アレルギーがあります。
- 即時型
- 遅発型
実は、食物アレルギーには即時型と遅発型が存在するとされています。特に劇的な症状がなくとも、日常的な不快を催すのは遅発型フードアレルギーが原因かもしれません。
金属アレルギー
同様に、手荒れを生じさせるアレルギーの原因として金属が挙げられます。
接触型の金属アレルギーは分かりやすいのですが、虫歯治療等に利用される歯科金属アレルギーの場合には原因特定が困難です。
長引く手湿疹の場合には、金属アレルギー検査を受けてみるとよいかもしれません。
肌荒れ対策あれこれ
アレルギーではなさそうだと分かれば、対処法は限られます。冬特有の手荒れなら、その原因は冷えや乾燥でしょう。
ここでは、以下の対策を挙げます。
- 熱補給
- 保護・保湿
- 運動
- 栄養
- 睡眠
熱補給
冬場の手荒れの原因は、何と言っても熱不足に他なりません。
手先や足先が温かいと感じられるとき、実は身体は体幹部の温度である深部体温を下げようとしています。冬場は逃がすべき体熱が自力の発熱だけでは足りない状況にあるため、手先にまで温もりは行き届きません。
ならば、日常的に外部から温度エネルギーを補充しておけばどうでしょうか?
既に冷えた手足を局所で外側から温めるのではなく、体幹部に熱を送り、その熱を逃がす働きを利用して内側から温める。
こちらの商品は体幹部を温めたい女性向けに開発されています。男性の方も上記商品の貼り付け位置を参考に貼るカイロを使用してみてはいかがでしょうか?
保護・保湿
冬の寒さによる肌荒れの原因を探ってみれば手指の乾燥が大敵らしく、手荒れを気にする人は出来るだけ水仕事を控えて、もしするならゴムやビニールの手袋と綿手袋の合わせ技で水に触れない、もし手洗い等を行ったらその後すぐにクリームで保湿、などなど対策がいくつも見つかります。
既に少し荒れた肌をそのまま酷使するのは自殺行為です。乾燥部はひび割れ、悪くすると痛みと出血を伴います。
足りない油分は白色ワセリンで補給しましょう。白色ワセリン自体に薬効はありませんが、手肌の乾燥対策等には広く利用されています。薬局・薬店、ドラッグストア等でも手に入れることができます。
べたつきが気になる場合はグリセリンを。
肌という特殊なバリアに包まれた私たちのカラダは、外部の水分を取り込みにくい構造をしています。外から水分タップリのクリームを塗っても、あまり効果はありません。
しかし内側から潤してくれる機構がしっかりと備わっていますのでこれを信頼し、せっかく潤した水分を外へ逃がさないことに注力すれば良いわけです。
運動
出来るだけ水に触れないなどの対策に加えて、なおすとまでは行かなくともより積極的に「改善する = 荒れにくい手肌を手に入れる」ことは出来やしないかと仮説を立ててみました。
手先の冷えは血行不良を招き、栄養素の供給を制限して手指の保護に必要な油分の生成を滞らせてしまう。血行を恒常的に良くするために必要なのは、その必要性を身体に理解させること、すなわち「使ってやる」ことに他ならない。
よって右手の指を積極的に、無理やりにでも使ってやることで荒れにくい手肌を手に入れることができるのではないだろうか?
右利きの現代人にとって日常的な右手使用はキーボード入力、マウス操作、スマホ操作、箸遣い、あとは個別の職業的利用くらいで、「指」レベルで見ると楽器演奏における左手の指ほど使われることはありません。従って、意識的に使ってやる必要があります。
廃用症候群の観点から考察
廃用症候群とは、身体部位の使用頻度の低いところから機能が低下していく現象を示しています。
手荒れ解消に本質的に重要なのは、手や指への「熱」と「栄養」、「成長・修復ホルモン」の配分です。
しかしこれらの配分は自律神経系(交感神経・副交感神経)によって無意識的になされます。使われない部位は、切り捨てられていく。そうした観点からも、手を意識的に使ってやり、その必要性を身体に教え込む必要があるのかもしれません。
栄養
肌荒れを「治す」ことを考えた時、その材料となる栄養素は外から採り入れなければなりません。
建築現場で資材もないのに作業員に発破をかけたところで、建築作業が進まないのと同じこと。では、「資材」となる栄養素とは何でしょうか?
実はこれ、あまり深く考えない方が良い問題なのです。
栄養素にも色々あって、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、などなど。たくさんあり過ぎて把握することが難しいので、これを覚えましょう。
- M: Meat(肉)
- E: Egg(卵)
- C: Cheese(チーズ)
これだけ。
医師が提唱する「MEC食」です。
「必要な栄養素」などと事細かに考えだすと足りない栄養素に目がいきがちで、「じゃあサプリメントを摂ろうか?」なーんてことになってしまいますが、ちょいとお待ちを。
我々ヒトは、食事から必要十分な栄養を摂れるようになっています。そして、上記の食品、にく・たまご・チーズは身体をつくるのに十分な栄養が含まれているのでした。ね、簡単でしょ?
これらを一杯食べ、血液に栄養素を載せて荒れた手指に運び込む。
「治る」とは薬で強制的に元の状態へ戻すことを言うのではありません。「治る」とは、身体の内からその機能を修復・回復させる作用によって起こる現象に他ならないのでした。
睡眠
手肌の荒れに限らず、身体の損傷を自ら治癒する能力を人体は備えています。いわゆる、自然治癒力です。
自然治癒力が最もよく発揮されるのは睡眠中であると考えられ、寝る際に手肌荒れ対策を施しているか否かで翌朝の回復具合が大きく変わってくるでしょう。
「資材」となる栄養素をMEC食でたっぷりと補給したら、あとは「作業員」が働くホワイトな労働環境を整えてやりましょう。
上記の運動で血行を改善することに加え、就寝時に特に気にすべきなのはやはり「冷え」と「乾燥」で、これらを保護する必要があります。
良く使われるのは、綿手袋。
洗い物の際に防水グローブに重ねてはめたり、寝る際に保湿クリームを塗り綿手袋をはめる。
あるいは、指先だけなどでしたら綿手袋やビニール手袋を買ってきて自分で指先分だけ切り取り、指サックのようにはめて寝ることをオススメします。
あなたの手や指の荒れを直してくれる何かは、あなたの外側にあるのではありません。あなたがその身体に備えた、自然治癒力にあります。
プラセボ製薬株式会社では、自然治癒力を信頼してみることから始める健康観を提供しています。モノ自体が効くわけではなく、治ろうとするあなた自身の力が発揮されることをサポートする、そんなふうに考えてみると良いように思われます。