認知症で薬を飲み過ぎる方への服薬介助・管理に偽薬を使う

高齢者の方、特に認知症や痴呆症の方への服薬指導あるいは服薬介助には工夫が必要です。

認知症状の進行によって医師の指示通り正しくおくすりを服用することが難しい場合には介護者の補助的なケアが必要不可欠になりますが、認知症自体の特徴がそれを困難にしてしまう場合があるからです。

『認知症の人への服薬介助の工夫|公益社団法人認知症の人と家族の会』によれば、認知症の方の服薬管理の問題は以下の3点です。

  1. 医師の指示通りに間違いなく服薬できるか、「コンプライアンス」の問題
  2. 薬を飲んだのに「まだ飲んでいない」と要求する問題
  3. 服用を嫌がって飲まない問題

薬効成分を含まず、薬に似せた偽薬を使えば、医師や介護士のみならず、在宅で介助されているご家族でもこれらの問題を軽減することができます。

「もう飲んだじゃない!」と叫ぶ前に

認知症の方は記憶力が低下するため、ついさっき飲んだクスリも「まだ飲んでいない」と思い込んでしまうことがあります。

周囲の者にとっては客観的な事実として「飲んだ」はずなのに、ご本人にとっては「事実として、飲んでいない」

認知症の方に寄り添う介護

ご本人が信じる事実と客観的な事実の齟齬は服薬コンプライアンス(薬の服用規定を遵守すること)の低下を招き、無用な薬の過剰摂取によって副作用が出てしまうなど弊害があります。

しかし思い込みの事実でもご本人にとっては絶対の真実であり、それを曲げるようなケアは得策ではありません。介護者が頑なな態度で臨めば、返って事態をこじらせてしまうことにもなりかねないのです。

「まだ飲んでいない」と仰るならば、本当に飲んでもらうのが一番ご納得いただけるはず。

薬効成分を含まない偽薬ならば、安心して飲んでいただけます。そこには「これね、お医者さんにもらった良く効くおくすりなんですよ…」など、ちょっとしたウソが介在しますが、人間関係を潤滑にするウソの効用を積極的に利用してみるのも悪くないでしょう。

認知症の介護においては、妄想的精神世界とも呼べる介護される側の物語にできるだけ寄り添ってあげるのが得策であると考えられています。

できるだけ否定しない、できるだけ

社会における人間関係の大半は、双方の歩み寄りや相手の立場を慮る思いやりを前提としています。

しかし、認知症介護ではそうはいきません。

介護される側から介護する側への歩み寄りを期待すると、期待の分だけ裏切られた際の失望も大きくなってしまいます。

ここはむしろ、ある種の諦念を胸に取り組まなければなりません。あきらめが肝心と言う訳です。

高齢者さんの中には、大のクスリ好きと言えそうな方がたくさんおられます。三度の飯より薬好き…などというとヤバそうですが、本当に医薬品依存と言って差し支えないような状況の方も中にはおられるようです。

そうした場合にも、その方の心の拠り所となっているであろう医薬品を無理やりに奪い去るような方法は避けるべきだと思われます。

偽薬で代替できないか、考えてみましょう。

ホンモノ偽薬「プラセプラス」

さてプラセボ製薬株式会社の「プラセプラス」は、偽薬を手軽に購入・使用できるように開発されたプラセボ食品です。

プラセボとは偽薬のことであり、「プラセプラス」には何らの有効成分も含まれておりません。

またお薬を飲み込む練習などに積極的にご利用いただけるよう、苦みをなくし、ほのかな甘みがつけてあります。認知症の方の中には、苦みが原因で服薬を拒否する方もおられますので、まずはほのかな甘みの偽薬を使ってスッと飲み込めるよう練習されても良いかもしれません。

注意点

薬効成分を含まない偽薬でも何らかの身体的・精神的効果が現れることがあります。この現象は「プラセボ効果」あるいは「偽薬効果」と呼ばれ、一般に広く認められています。

しかしながら、「プラセプラス」が認知症状を改善する何らかの「偽薬効果」をもたらすような科学的/医学的根拠は一切ありません。

また既にご利用中の方から「偽薬効果」に関する報告は受けていません。

本記事で紹介するのは、あくまで「まだ飲んでいない」という認知症の人が見ている世界に寄り添うために持ち出されることを想定しています。

「プラセプラス」は、愛情のこもったウソを有効利用する柔らかな介護を応援します。

参考情報:カプセル剤

プラセボ製薬株式会社の製品というわけではありませんが、カプセル剤の代替品としてお使いいただけそうな商品が販売されています。

本来は粉薬や顆粒剤を入れたり、液体状の物を入れるための空のカプセルですが、もちろんカラのまま利用することも可能です。

カプセル自体の大きさは00号(特大)~5号(小)程度までと、数字が大きくなるごとにカプセルは小さくなるという設定になっています。

色つきの物などありますので、お好みで揃えてみてはいかがでしょうか。

参考情報:粉薬、顆粒剤

歴史的に偽薬として用いられてきたでん粉等、薬理活性の無い粉末も身近に用意することができるでしょう。

少し粒だった顆粒状の物も、人工甘味料等として提供されています。

食品としての適正な使用の範囲であれば、介護や看護の場面でご利用を検討されても良いのではないでしょうか。

認知症の方は増え続ける

2015年現在、団塊の世代が75歳以上となる10年後に認知症の人が最大で730万人に上ると推計されています。

認知症高齢者に限らず、若年認知症と呼ばれる65歳以下で認知症を発症される方の増加も懸念されています。

果たして、10年という歳月がどれほどの変化を介護医療分野にもたらしうるのでしょうか?

介護職員の待遇改善や訪問介護の受け入れ態勢を整えるなど国による対策を要請し、根治薬となる新薬の開発を期待するというのも一つの手ではありますが、今まさに目の前で起こっていることを既にあるもので工夫して対処しなければならないのなら、是非偽薬として「プラセプラス」をご利用ください。

医療費の抑制にも

認知症高齢者に限った話ではありませんが、高騰し続ける日本の医療費は常に財政破綻や医療崩壊のリスクと隣り合わせの危機的状況です。

どこかで歯止めをかけなければ、現状の手厚い高齢者向け医療を維持することはできません。

怠薬や残薬の問題等、医薬品の適正管理・利用に関する様々な問題に対して偽薬を用いたアプローチがあり得るのではないかとプラセボ製薬では考えています。

死ぬまで医薬品を飲み続ける生活を改め、人生のある時点で医薬品とお別れする「卒薬」の取り組みもその一つ。

卒薬と言ってもある日突然に止めてしまうのではなく、偽薬と併用しつつ、医薬品の使用量を徐々に減らしていこうというわけです。

偽薬による医療費の低減については、今後も当サイトで検討していきたいと思います。