なはんてことはありませんか?
誰もが抱く、憂鬱感
実はそれ、誰もが通る道かもしれません。
もちろん、うつ病やうつ状態とは関係なしに多くの人にこのような心理的傾向が見られます。
行動心理学的な理解
では、なぜこのような心理的な現象が起こるのでしょうか?
行動心理学の原理を応用して仮説を提示してみましょう。
憂鬱感の出所がはっきりとしていないことを仮説の前提としており、社内あるいはバイト内の人間関係等において憂鬱になる明らかな原因を抱えている場合を除きます。
残念ながらセクハラ上司やいばりんぼ先輩の下では、仕事を始めても気が滅入ることに変わりありません。
死ぬほど、死にたいほどつらいなら
国内企業に勤める労働者が過重労働を強いられた末に自殺してしまう事件が度々起こっています。
「過労死」という日本語が「karoshi」として英語辞書にも収載され国際的な認知も高まっています。
2016年には、初の「過労死防止等白書」が厚生労働省によってまとめられました。
参照リンク:過労死等防止対策白書|厚生労働省
「仕事に行きたくない」という憂鬱感が慢性的に募り、希死念慮や自殺願望と呼べるほど大きなものになったら小手先で対処するような方法ではなく、逃げ道を確保し、メンタルヘルスの専門医に相談するなどより根本的な対策を講じるようにしましょう。
本記事ではある意味で小手先の、対症療法的でライトな対策を検討しています。
心理学的な仮説
一般的な現象として、「仕事に取り掛かる前に憂鬱になり、仕事に取り掛かると気が晴れてやる気が出る」という心理的な変化が見られます。
「一貫性の原理」として知られる行動心理学的な原理を用いて説明するならば、以下のようになります。
信頼を得るための一貫性
人は周囲から信頼され、認められたいと考えています。周囲に認められるためには、行動に一貫性を持たせなければなりません。
事前に期待されていたことと実際に行ったことが違えば、信用を落とすことになります。
社会的信用を失うことは、職場の人間関係など社会の中でしか生きてゆくことのできないヒトにとって大きな損失となりますので、なんとしてもこれを避けねばなりません。
約束は守らねばならない。
このことは、本能が我々に訴えかける避けがたい衝動的心理となります。
守られるまでが約束
しかし「毎朝○時に出社して仕事を行う」など、将来のある時点で継続的に仕事に取り掛かる労働契約をした場合、必然的に未だ守られていない未来の約束に対する心理的負債を抱えることになります。
守られていない約束を成就する唯一の方法は、未来のある時点における自分の行動を契約で定めた範囲内という極めて狭い領域に限定することです。
つまり、約束を守るためには、仕事に行かなければということです。
「仕事の日は毎朝○時に職場にいなければならない」という特定の日時と場所が迫れば迫るほど、自分の行動を限定するための心理的な負債は増大し続けます。
従って仕事の直前には、大きな心理的負債を抱えることになります。
要するに、めんどい!のです。
職場に着くと契約は一部満了
さて、増大した心理的負債を一挙にゼロにする徳政令みたいな方法があります。
それは、逆説的ですが、約束を守ってしまうことです。
仕事やバイトに関して言えば、契約の日時・場所に我が身を置くこと。その時点ですでに契約の一部は満了してしまいます。
仕事始めのルーティン
サラリーマンやOLなら、出社後パソコンの電源を入れてメーラーを起動する。あるいは社内のイントラネットにアクセスし、必要な情報を閲覧する。もしくは机をおもむろに片づけてみたり、拭いてみたり。
またアルバイトならタイムカードを押したのち制服に着替え、「店員心掛け10訓」を唱和する。
そんなルーチンワークを始めてみると、不思議と「やる気」と呼べそうな感情の高まりを自らの内に感じることができるのではないでしょうか?
こうした仕事始めの高揚感には訳があります。
仕事始めの高揚感
すでに守られた契約に係る心理的負債はゼロですが、ただのゼロではありません。マイナスからのゼロ、上昇気流に乗ったゼロ、あとは上がるだけのゼロ、なのです。仕事に取り掛かった途端、心理は一気にプラス方面へ。
約束の向こう側にあるのは、約束されたポジティブ心理です。
誰かに両手を胴体へ押さえつけてもらいながら外側へ腕を拡げるように力を入れ、しばらくしてから押さえつけを解いてもらうと自然に腕が挙がっていくのと同様に、押さえつけられていた心理は自然と高揚していきます。
心理的負債に対する不安を抑えられたら
上記の仮説によれば、仕事やバイトに係る心理的負債を事前になくすことは不可能です。
確定的面倒
仕事を行う契約をすれば、ほぼ確実に直前にめんどくさくなって後悔する。
…と思ったところで中々辞められるものではありません。
しかし仕事に取り掛かりさえすれば、その日の仕事は案外とご機嫌にこなすことができるはずです。
プラセボ活用法
プラセボは偽薬です。偽薬には、当然ながら仕事前の憂鬱感を消す成分を含んでいません。
しかしもし、そのような憂鬱感を抱えることを事前に恐れて行動に移せない自分を変えてみたいのなら、プラセボが何らかの助けになるかもしれません。
もし「仕事行くの面倒やな…」と思ってあまりにも仕事に行きたくないのなら、少し先を見過ぎています。
今日の憂鬱感は、今日の仕事へ行くことに加えて、将来に渡り約束を守ることの不安が先回りで上乗せされています。
その先回り不安と一緒にプラセボを飲み込んでしまいましょう。
信用を失うという本能的な恐れを解消することはできませんが、それが本能的な恐れであると知っていることは大きな安心感につながります。
明日、世界は滅びるけれど
未だ抱えていない心理的負債の先回り不安は、心理的負債が解消した後の高揚感さえも覆い尽くしてしまいます。
明後日のことは、明日考えよう
しかしその高揚感は、約束された高揚感です。仕事に取り掛かりさえすれば、きっとやる気になる。それをみすみす逃す手はありません。
プラセボを飲んで、負債はなくならずとも、先回り不安が少しでも解消したなら、それはプラセボ効果だと言えます。
それは、ただのプラセボ効果です。ならば、いつしかプラセボの助けなしでも仕事へ向かうことができるようになるでしょう。
明後日のことは、明日考えましょう。明日のことは、明日考えましょう。
今日、この一日。
今にフォーカスしてみることをお勧めします。
将来不安のその先に
将来はいつでも不安なものですが、不安に基づいて将来を設計する必要はありません。
過度の楽観と同じく、過度の不安も将来に対する見通しを曇らせてしまいます。
年単位での将来を見据えたければ、明日も明後日も必ず起こりうる不安を一時的に脇に置く必要があります。
明日世界が滅びようとも、今日リンゴの木を植えるという心掛けで。プラセボがその一助となれば幸いです。