『医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得』は家族介護者の必読書

認知症高齢者の介護をされているご家族にとって、自身の経験を具体的に語りかけてくれる先輩の存在ほど頼もしいものはありません。

『医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得』(健康人新書)は、著者である工藤広伸(くどひろ)氏自身の経験と工夫を、後に続く介護者のために惜しげなく披露する良書。

既に認知症介護をされていてそれなりにストレスを感じておられる方や、今後ご家族で介護をされる可能性のある方は読んでおいて損はありません。

おことわり

本書にてプラセボ製薬の「プラセプラス」をご紹介いただいておりますので、当記事は偏った内容となっている可能性があります。

出版側より宣伝の要請があったわけでは一切なく、本書の内容を読み通した上で「優れた内容である」、「広く読まれるべき」と思う故の記事掲載となりますが、ネット上の評判や第三者の感想を書籍購入の決め手とされる方はそこら辺の事情を差っ引いたり、眉に唾を付けたりしながらお読みいただくことをオススメします。

くどひろ氏について

『医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得』の著者である工藤広伸(くどう・ひろのぶ)さんは「くどひろ(元40kaigo)」のハンドルネームで、ご自身の祖母と母に対する認知症介護経験を綴った介護ブログ「40歳からの遠距離介護」を運営しておられます。

廣済堂出版より健康人新書として出版された本書は、当ブログの内容をまとめてリリースされた電子書籍に加筆、編集されたものです。

ブログ各記事末尾に付された「今日もしれっと、しれっと。」に象徴される(良い意味での)抜け感が、本書を通底する介護観となっているように思われます。

心得43

良い意味で肩の力が抜けているこの感じは、あるいはあきらめ感に依っているのかもしれません。

心得43■あきらめも肝心! あきらめの本当の意味って?

認知症の人のありのままを受け入れる、何の損得も考えずに受け入れることができれば、介護する人も心穏やかに過ごすことができます。

(156ページ)

介護者の「どうする」「こうしたい」といった期待を孕んだ想いは、必然、裏切られてしまうことになります。そうした心労を回避する手段として「どうなる」「こうきたか」という現実視点で取り組むこと。それは、介護の留まらず人生における教訓なのかもしれません。

介護者保護主義

本書を読み、初めて触れた言葉の一つに「介護者保護主義」があります。

認知症の人と介護者のどちらかを優先しなければいけない場合、迷わず介護者を優先しなさいという教えです。

(158ページ)

認知症治療の名医とされる河野和彦医師が開発された「コウノメソッド」中の言葉のようですが、なるほどこれはまさしくその通りだと思いました。

偽薬利用の是非について

手前味噌で申し訳ありませんが、介護の現場で偽薬を使用することについてこの「介護者保護主義」を適用するならば、使用目的は被介護者の便益に適うこと以上に、介護者のストレス緩和を主目的として利用すべきなのかもしれません。

医薬品も飲みすぎると毒になるから、だまして申し訳ないけれど、薬を飲みたがる場合は偽薬を飲んでもらおう…

こうしたエクスキューズ(言い訳)を心の中で用意することは、若干の心理的なストレスを生じさせるように思われます。何度も繰り返していれば、そうした感情にも慣れが生じるのかもしれませんが…。

だったらいっそ、介護者のストレス緩和の為に使用すると開き直ってみるのが良いかもしれません。

何度も薬、薬って求めてきて煩わしいから、ニセモノで納得してもらおう

一般販売される偽薬の存在は、介護者のウソつきストレス緩和に役立っているのではないかと考えています。

介護ストレス軽減は喫緊の課題

『医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得』では、介護者の負担について、それを軽減する制度・人・モノ・考え方がくどひろ氏の経験に即して紹介されています。

超高齢化で介護に携わる人がますます増える昨今、介護者のストレス軽減策の必要性も弥増すことでしょう。

現在、町を闊歩する元気なご老人も、あのおじいさんもこのおばあさんも、いやあるいは自分自身だって介護する身に、また介護される身になる可能性を秘めています。

介護に基づく心理的ストレスが介護者の身体活動や精神活動を妨げることがあるとすれば、社会構造自体が連鎖的に、急速に立ち行かなくなるかもしれません(現在進行形という話もありますが…)。

現状維持という消極的な発想ではなく、新たな介護環境の形成に向けて介護者一人一人が動き出す。個人の取り組みが、ひいては社会をも新たな状況へ導く。

そのような(ありがちで、達成困難に見える)結論の具体的処方箋として、被害者意識で介護ストレスに向き合うよりもストレス軽減に策を凝らし、しれっと日常を過ごすことの大切さを示してくれる。

そんな価値が、本書にはあるように思われます。