コロラド大学ボルダ―校とコロンビア大学の共同研究の成果として、プラセボ効果に関する以下の報告がなされました。
Nature Neuroscience | Published online 19 October 2014
Liane Schmidt, Erin Kendall Braun, Tor D Wager & Daphna Shohamy
『Mind matters: placebo enhances reward learning in Parkinson’s disease(精神が重要:プラセボがパーキンソン病における報酬学習を向上させる)』
パーキンソン病とは?
パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が減少してドパミンが不足することにより、手足のふるえや緩慢な動作、あるいは精神症状を呈する原因不明の病気です。
現在のところ根治療法はなく、病状に沿ってドパミン補充などの対症療法が為されています。
詳細は『パーキンソン病 – Wikipedia』をご参照ください。
研究の概要
今回報告された研究では、報酬系に関わるドパミン神経が脱落したパーキンソン病患者において減弱するとされる「報酬により強化される学習能力」に対して、プラセボが効果を示すか否かが検討されました。
報酬とは、例えば、「金銭を得ること」あるいは「既に与えられた金銭を失わないこと」を指します。
研究者たちは18人のパーキンソン病患者に対して、脳内の神経活動をfMRI(機能的核磁気共鳴画像法)を用いてモニタリングしながら、コンピュータ・ゲームによる簡単な報酬学習課題を以下の3条件下で順に与えました。
- 薬剤を摂取しない*
- 薬剤を混ぜないオレンジジュース(プラセボ)を飲む*
- ドパミン増量剤(L-DOPA)を混ぜたオレンジジュースを飲む
* 1.無処置および2.プラセボ処置の順番は、18人中8人が1→2、10人が2→1とのこと。3.薬剤摂取の効果は持続的と考えられるため、順不同とすることはできない。
そうしたところ、ドパミン増量剤を摂取した場合に報酬学習に関与するとされる脳部位(線条体および前頭前皮質腹内側部)が活性化されたのと同様に、プラセボによっても報酬に関わる脳部位が同じように活性化されました。
この結果を受けて、当論文の共同著者であるWarger博士は以下のように述べています。
「この発見は、脳内のドパミン、期待および学習の関連性を示しています。期待や肯定的感情が重要であると認識することは、パーキンソン病患者の生活の質を向上させる可能性があります。また今回の発見が、他のタイプの病気を治療する際にプラセボがどのように効果を示すかを探る手がかりになるかもしれません。」
助成
当研究は、マイケル・J・フォックス パーキンソン病リサーチ財団(※)により助成を受けています。
※映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でおなじみのマイケル・J・フォックス氏は自身のパーキンソン病発症後、当財団を設立してパーキンソン病関連研究の助成活動を行っておられます(参照:『マイケル・J・フォックス – Wikipedia』)。
参考記事
当記事の執筆にあたり、以下のWeb記事を参考とさせていただきました。より詳細な情報は、上記論文および以下の記事をご参照ください。
- 『Colorado Arts & Sciences Magazine » Parkinson’s patients improve with placebo』
- 『Placebo Improves Brain Activity in Parkinson’s Patients | Psychiatry Advisor』
- 『Placebo boosts brain activity in Parkinson’s patients – Medical News Today』