カウンターフィット薬(偽造医薬品)にご注意を

プラセボの訳語である「偽薬」と似た言葉に、「偽造薬」あるいは「偽造医薬品」があります。

これらはどういったものなのでしょうか?

偽造薬、偽造医薬品とは?

偽造薬や偽造医薬品は、その名の通り偽造された医薬品のことです。

主に日本国外において、何らかの効果効能を有する本物の医薬品に対して、錠剤や包装などの外見を似せた医薬品が無許可で製造・販売されているようです。

特定の企業などが有する商標権を侵害していると判断された場合、日本国内への移送時に税関で「知的財産侵害物品」として差し止められる場合があります。

安全性に関する不安

また外見だけでなく、それっぽい薬効成分らしきものが加えられていることもあります。もちろん安全性が担保されたものではありませんので、服用によりいかなる事態が発生してもおかしくはありません。

さらには製造過程等に問題がある場合も多く、異物混入などの問題も指摘されています。現に、偽造医薬品の服用による死亡事故も報告されています。

医薬品の製造・販売は法律(日本では薬機法)により厳しく規制されており、規制当局の許可・承認なくこれを行うことは禁じられています。

しかし、現在では個人がインターネットを通じた医薬品の輸入が簡単にできるため、日本国内にも少なからず流通しているようです。

カウンターフィット薬とは?

「カウンターフィット(counterfeit)」は「偽造」を意味する英語です。すなわち、カウンターフィット薬とは偽造薬のことです。

拡大するカウンターフィット薬の問題

有名ブランド商品やキャラクター商品を無許可で偽造し、販売して不当に儲けている輩が絶えないように、医薬品もニセモノが世界中に出回り問題となっています。

偽造医薬品の年間売上高が数兆円~数十兆円に達し、流通量も途上国では10%~30%(あるいは50%以上とも)を占めるほど拡大しており、現在でも急速な勢いで増え続けています。

医薬品はブランド物やキャラクター商品よりも簡単かつ安価に製造できて儲けも大きいためか、形だけでは飽き足らず有効成分のニセモノまで加えることがあるようです。

この手の込みようには恐れ入りますが、要らんもん入れるくらいなら最初から何も入れるなよ…とも思います。製造業者なりのプロ意識、でしょうか。

より詳しい情報は厚生労働省の『個人輸入において注意すべき医薬品等について』や、厚生労働省の委託により、一般社団法人 偽造医薬品等情報センターが運営するあやしいヤクブツ連絡ネットの個人輸入に関する記事等をご参照ください。

カウンターフィット薬の種類

カウンターフィット薬(偽造医薬品)として流通しているものの中で特に目につくものはED治療薬です。

バイアグラの発売以来ニセモノが拡散し続け、レビトラやシアリスのニセモノも出回っているようです。また、AGA治療薬など男の欲望や夢を実現させる医薬品にニセモノが多いのは、それだけ需要があるからでしょうか。

製薬各社はこれを危険視し注意喚起を行っています(『インターネット購入での偽造医薬品にご注意ください』)が、医療機関を受診せずともED治療薬を手に入れることができる手軽さからか、インターネットでの個人輸入は増え続けているようです。

しかしながら、水際で見つけることができなければ流通量の実態を把握することはできません(財務省関税局『差止実績(公表資料):知的財産ホームページ』)。

偽造薬と偽薬は違う?

ある意味では、偽造薬は偽薬と呼んでも差し支えのないものですが、その用途が異なります。

  • 偽薬:臨床試験の際に対照薬として用いる
  • 偽造薬:本物の薬と偽って販売することで利益を得る

一般的には、偽薬は医療現場でのみ使用され市場に出回らないものです。逆に、偽造薬は積極的に市場に出回らせることで不当な利益を生むばかりか、健康被害まで拡散させる良からぬものです。

では、偽薬を一般用に販売することはどのように考えればいいのでしょうか?

真っ白白の結論とは言えないかもしれませんが、「本物の偽薬(プラセボ)であること」を明確に謳って販売するより他ないと考えています。ある場面では、偽薬を販売することに伴う怪しさより、有用性が大きい場合があると信じるからです。

もちろんプラセボ製薬も、カウンターフィット薬(偽造医薬品)の撲滅に賛成しています。

追記

2014年、偽エボラ出血熱治療薬

2014年8月現在、猛威を振るうエボラ出血熱に対して薬効があると称する医薬品が流通しているようです。

米食品医薬品局(FDA)では、エボラ出血熱に対して予防および治療効果があると認定された医薬品は存在していないとして注意を喚起しています。(2014年8月15日付MSN産経ニュース『【エボラ出血熱】「偽薬にご注意を」 苦情殺到で米食品医薬品局が警告』)

既にあるものに似せた偽造薬に対して、いまだ存在していないものを存在せしめて偽りの安心を売りつけるのはいかにも偽薬的な使い方ですが、このような使い方には問題があると言わざるを得ないでしょう。

2015年の税関差し止め件数

平成27(2015)年現在、商標権を侵害する偽物として税関で差し止められた偽造医薬品の件数は「1,030件」に上り、10年前の100倍となっています。

参考リンク:

  • 税関の偽医薬品差し止め件数、10年前の100倍 「性機能改善薬」多く(産経新聞) – Yahoo!ニュース(206.10.10)
  • 偽医薬品差し止め 氷山の一角、健康被害も(産経新聞) – Yahoo!ニュース(206.10.10)

2016年10月、偽バイアグラ大量押収

性機能改善薬のパイオニア、「バイアグラ」の模造薬が国内で大量に押収されたニュース。大阪市内で偽バイアグラを保有していた台湾籍の貿易事業者が逮捕されています。

下記リンク先の情報よれば「韓国から錠剤や容器、ラベルなどを品目別に持ち込んで製品化していた」とみられており、「国内の宅配便の伝票を発見、押収した」そう。

日本国内で29万6千錠が捌けるという、凄まじい需要に唸るばかりです。

参考リンク:

  • 模造バイアグラ所持疑いで逮捕 大阪府警、29万錠を押収 : 共同通信 47NEWS(2016.10.11)
  • 偽バイアグラ、過去最高の30万錠押収…保管の男ら容疑で逮捕 – Yahoo!ニュース(2016.10.11)