臨床試験の割付結果は教えてもらえる?治験参加者のツイートが話題に

2015年12月2-3日、世の中のオモシロ気になる系の話題をまとめる人気サイト「togetter」さんから当ウェブサイトへ参照流入が急に増えたのでなんだろう?と思いつつ覗いて見たらば。

スギ花粉の時期に花粉症治療の新薬試験参加して「うおおおお!鼻水止まったすげええ」って言ってた結果「実はあなたに飲ませていたのはプラセボ(薬効無し)の薬でした」という通知が来ていて人間の思い込みの凄さに驚いている。 pic.twitter.com/10qaPxu8mw

— おさんぽみるく (@MILKWALKEE) 2015, 12月 1

すごい、新薬の臨床試験の群割り当てって被験者に知らされるんだ…。

(※2016年1月16日現在、画像の閲覧が出来なくなっています。)

togetterまとめ

なお、togetterさんの今回のまとめ記事は以下のリンクより。

花粉症治療の治験に参加したら鼻水が止まった→後日、意外な事実が判明して驚き「すげえ」

実は以前にもプラセボ製薬についてまとめていただいておりまして。

『偽薬』を作っている製薬会社があるらしい「あれってジョークじゃないの?」【真相】

プラセボ効果に関する(ごく一部の)強い関心を窺わせます。

治験とは?

二重盲検法を用いた治験について、またそこで使われるプラセボ(偽薬)について、ここでは簡単にしておきます。

新薬はプラセボ効果以上の効果(真の効果、などと呼ばれることも)があることを証明しなければ、販売の許認可がおりません。

しかし、我々が認識し得る現実の世界において真に科学的・定量的に“真の効果”を測定することは原理的に不可能なので、統計学の手法を用いて「プラセボ効果以上の効果がない」という仮説が否定されることをもって効果の証明を代替します。

ややこしいですが、新薬の効果を調べるために行われる治験においてはプラセボ(プラセボ、偽薬)であることを伏せてそれを飲ませられる人が一定数おられて、おさんぽみるくさんはばっちりプラセボを飲んでいたということです。

なのに効いた、と。実感的には、とても良く効いた、と。

ザ・プラセボ効果で、効いた理由を科学的に説明ができないため、一応の説明原理として「思い込み」が提出されるという一連の流れがあります。

以前から医療者によるプラセボ効果様の報告は多数ありますが、被験者側の報告は珍しいと思います。

後から「あなた飲んでたの、プラセボ(偽薬)だから」と知らされる機会はそうそうなかったはずなので。

治験実施者の思惑?

言い忘れてましたが今回のコレは治験終了後に「有効薬かプラセボ薬か」の結果通知を受け取るかは自分で選べます。何も知らずに終わる人もいれば、僕みたいに興味抱いて貰う人もいます。ご参考までに。

— おさんぽみるく (@MILKWALKEE) 2015, 12月 2

薬効有る無し関係なく途中で症状が悪化してどうしても苦しくなったらいつでも試験は中止できるしアフターケアもちゃんとやってくれる。自分みたいな偶然にアレルギーを引き起こさなかった鈍感な被験者が居て対照実験が初めてできるっての日本の新薬開発に関われてるの本当に良いので治験オススメです。

— おさんぽみるく (@MILKWALKEE) 2015, 12月 2

凄いですね。

治験業務自体はノウハウの塊と言うか、経験が無ければ実施することが難しいため専門の請け負い業者へとアウトソーシングされることが多く、洗練されるのも納得されるのですが、本当にしっかりしていることが分かります。すごい。

治験に興味があるなら

治験に参加するには条件が様々ありますが、結構募集はあるようで。近頃は健康食品も高機能を謳いたい要望があって、モニター試験されることが増えているようです。

検索してみれば被験者募集サイトがすぐに見つかるかと。もちろん、ご参加は自己責任にて。

インターネット情報網

上記の試験に関してググって見たらば、すぐに下記の情報が見つかりました。

TK-041 第3相臨床試験 季節性アレルギー性鼻炎患者を対象とした二重盲検比較試験

目標症例数が「900」となっていて、その3分の1がプラセボ(偽薬)に割り当てられていたとすると、約300人。

そのうちの何割かが結果の公開を望み、思っていた結果とちがって驚いてたった1人がツイートしたら数万人~数十万人に知れ渡る。

なんだかすごい世界に住んでいる気がします。

ネットが治験に及ぼす影響

ネットですぐに繋がれるこの世界において誰かの口を封じることは大変難しく、それは治験においても問題になっているそうです。

曰く、ネットの掲示板などでのやり取りを通じてプラセボを投与されたと自己判断した治験参加者は、ドロップアウト(途中でやめること)してしまう可能性が高いと。

「プラセボ、あるいは実薬が効いていない」という情報は治験実施者にとって死活的に重要なデータであるにもかかわらず、自己判断で止めてしまった方のデータについては捨てるしかなく、そのために十分な統計的解析が行えない事態も発生しているとか。

逆に今回の件ではプラセボだけど実感としてはよく効いていたということで、新薬にとってはチャレンジングな試験となったのではと思われますが、はたしてどうなるでしょうか…。