プラセボ製薬では、認知症高齢者などの薬の飲み過ぎ・飲みたがりに介護者が適切に対応するための介護用偽薬「プラセプラス」を販売しています。
その関係上、認知症に関する情報に接することがままあり、以前にも認知症カフェやオレンジカフェの取り組みについて紹介しました。
広報誌は時代を反映して
県や市の広報課が発行する広報紙には、地域のイベントや地元の企業紹介や入札情報などが掲載されますが、時に「話題提供」的な紙面作りがなされます。
兵庫県が発行する県民だより「ひょうご」平成27年12月号(神戸版)の表紙では、加古川市内で開かれている認知症カフェ「KNOT(ノット)」さんの写真が掲載されました。
恐らく、日本全国どの地域でもこれら地方紙を読んでいる主要な層は40代以上の方々かと思われますので、自然、高齢化社会を反映した話題が興味を持って読まれるのでしょう。
認知症カフェって?
認知症カフェとは?という疑問に「ひょうご」は以下の回答を示します。
- 誰もが気軽に参加できる集いの場
- 認知症の人やその家族が安心して過ごせる地域の居場所
- 市町や社会福祉協議会、NPO法人など運営主体はさまざま
- 兵庫県内では9月現在で93か所設置
ここでは、というか認知症に積極的に取り組む方たちの間では、「認知症の患者」という言葉は使われません。「患者」という言葉がない以上、その認識は「人」を中心としてあることになります。
KNOT(ノット)の事例
毎月第4日曜、11時から14時にかけてオープンする加古川市内の認知症カフェ「KNOT」。
月1回、およそ3時間の定期開催時には50人近くが訪れるとか。お一人100円の参加費を募り、市民団体「加古川認知症の人と家族、サポーターの会」のスタッフがお手製の食事を振舞っているそうです。
『認知症の苦楽を楽しみながら情報交換 加古川に交流カフェ(2015.6.28 神戸新聞NEXT)』
日本全国各地で似たような事例紹介が既にあったか、近々なされ、「認知症カフェ」の取り組みがより多くの方に知られるようになると思われます。
目的・課題
認知症の方にとっては、外出して他人と関わる機会として。また介護者の方にとっては、先輩やプロに介護の方法を教えてもらえる情報交換の場として。
認知症カフェの運営目的は、地域の人の交流がメインとなっています。
金銭的課題
認知症の人を助けるといった発想はあまりなく、従ってこうしたカフェが提供するサービスが奉仕・ボランティア的な意味から無償で提供されることもあまりありません。
ただし、50人から100円ずつ受け取り、5,000円で場所代から食事代から人件費から何から何まで賄うことは不可能です。
行政主体が発行する広報誌においても紙面のいくらかは収益源として広告で埋まるように、継続的な事業として行うには利益がでなければなりません。もちろん自治体から補助金等が出る場合もあるでしょうが、補助金ありきの運営では継続性がないと言わざるを得ません。
認知症カフェに何らかの収益構造を構築するか、外部から広告を募るか、少なくとも収支がトントン(±0)にならなければ、数年の内に取り組み自体が廃れてしまうでしょう。
福祉や介護を夢や理想で語る時代は、とうに過ぎてしまいました。現実的課題に向き合うことが出来なければ、割を食うのは全ての参加者です。
敢えて損をすることの価値
走り出したばかりの「認知症カフェ」の取り組みが継続的な事業となり得るかどうか、未来のことはまだ誰にもわかりませんが、今実際に実施されている方には積極的にその価値を報告していただきたいと思います。
敢えて金銭的に損をしているように見えるその活動に、どのような価値を見出しているのか。
これから認知症カフェを始めようとする方に、何を伝えるべきか。
ぜひ積極的に発信してもらいたいと、誠に勝手ながら思います。