「地域医療連携推進法人」制度の創設に関する経緯まとめ@2016

平成27(2015)年9月16日に成立し、平成28年度にもその一部が施行される予定の改正医療法。2016年3月現在、厚生労働省の委託事業として周知セミナーが実施されています。

医療法人制度改革に関するセミナー(株式会社メディシュアランス)

※2016年10月現在、全日程が終了しています。

ここではビッグテーマとして挙げられる「地域医療連携推進法人」の創設に関して、その経緯を追ってみたいと思います。

問題解決策(ソリューション)としての制度創設

「地域医療連携推進法人」は、ある種の社会問題に対する解決策の一つとして創設された医療法人制度です。

解決したい問題はもちろん医療に関わることなのですが、どのような問題が現にあるのでしょうか?

民間資本と公的制度

国民みんなが公的な健康保険(医療保険)に加入し全員が保険証を持っている「国民皆保険制度」においては、保険料負担に応じた保険給付を公平に受けられなければなりません。

保険料は払ったのに必要な医療サービスを受けられなけば、その被保険者は払い損になり不公平です。「そんな保険には加入したくない!解約したい!」と思っても、強制的に加入させられるのが国民皆保険制度。逃げ場はありません。

この問題に対する解決策は、病院等の設置、医師や看護師等の配置など、誰に対しても適正な医療サービスの提供ができる体制整えることでしょうが、基本的には民間資本により設立される病院等は、経済的に見あわない、利益の出ない事業を行えません。

もちろん公営にしたところで経済的に見あわない事業は継続できませんし、こうした課題は過疎化や高齢化が進んだ地方における「無医村」問題として既に顕在化しています。

公的な性格を有する医療の提供はその他の営利事業のような市場原理に任せられないのだ、というのが現状認識となっています。

社会保障に関する見通し

社会保障制度は、少子高齢化の進展に伴い持続可能性に疑義が生じています。このままでは、いつか立ち行かなくなる。

もちろん、未来・将来に関するほとんどのことは予測不可能です。

ただし、出生率に関しては非常に不透明ながら、高齢化率、死亡率については予測できるため、人口構成に関してはかなり確定的な予想が可能となっていますので、近い将来にむけてあるべき社会の姿を現時点で捉える試みには大きな意義があります。

そうした試みは政府主導の下、既に実施されてきました。

平成20(2008)年に開催された、「社会保障国民会議」です。

この時点で、団塊の世代が75歳以上となる2025(平成 37)年度におけるあるべき医療・介護サービスの提供体制を確立する青写真が描かれました。が、そこで示された改革は遅々として進みません。

進まぬ改革への危惧が、実効力を伴う具体策の検討を要求する力の源泉となりました。「マジ、ヤバくね?」みたいな。

平成24-25(2012-2013)年に開催された、「社会保障制度改革国民会議」では、解決に向けての具体策の一例として「地域医療連携推進法人」の原型が挙げられました。

それが、「非営利ホールディングカンパニー組織」です。

ちなみに、平成26-(2014-)年に発足した「社会保障制度改革推進本部」が「このままじゃ、マジでヤバい。日本死ぬ」の認識の下、制度改革を着実にすすめようと奮闘しています。

非営利ホールディングカンパニー組織

医療施設経営安定化推進事業

非営利ホールディングカンパニー組織の詳細は、厚生労働省の調査研究事業である「医療施設経営安定化推進事業」で検証されています。

参照:◎ 平成25年度医療施設経営安定化推進事業 「医療法人等の提携・連携の推進に関する調査研究」報告書 1.非営利ホールディングカンパニー組織(PDF:608KB)

「地域医療連携推進法人」の連携推進に関しては、このホールディングカンパニー制度の目的を明確化したものと考えられます。

医療と介護の連携は地域単位で

超高齢化と言われる社会においては、医療制度と介護制度が密接な関係を持ちます。いずれの制度も互いに影響を与え、受ける関係です。

2014年から順次施行された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合確保推進法)」によって、医療と介護の各リソース、つまり施設や人材などの資源は別々にではなく、総合的に確保すべきと明確化されています。

ここでは「地域(市町村)」がその特性に応じて主体的に動くことで、社会保障制度を持続可能たらしめることが目指されています。

医療法人も協調的な運用を可能にする

病院や診療所の運営に関しても、市場原理に従う競争から、協調的な形へと変化しなければ早晩立ち行かなくなると予想されています。地域における医療の確保は、地域全体を見据えたうえで行わなければならない。地域医療は、連携しなければならない。

しかし、制度上の課題があったために、先に述べたように改革は進みませんでした。

検討会の開催、法案の成立

平成26(2014)年に閣議決定された「日本再興戦略」改訂 2014において、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」に関する措置を講じることが求められ(24ページ、92~93ページ)、所管の厚生労働省が検討会「医療法人の事業展開等に関する検討会」を発足させます。

平成27(2015)年2月9日、「医療法人の事業展開等に関する検討会」による最終とりまとめが提示されました。

これを受け、第189回国会(常会)提出法律案として2015年4月3日に提出された「医療法の一部を改正する法律案」が2015年9月16日に成立。「非営利ホールディングカンパニー型法人」の構想は「地域医療連携推進法人」として制度化されました。

参照リンク:「医療法の一部を改正する法律案」

冒頭のセミナーは、当改正案の周知を図るものとして実施されています。

なお、地域医療推進法人を制度化した改正医療法は「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」とされていますので、2017年までに施行される予定です。

地域医療連携推進法人とは?

これまでの経緯を眺めてみれば、地域医療連携推進法人とは、「地域医療(の)連携(を)推進(することを目的とする、非営利ホールディングカンパニー型の)法人」制度のようです。

参考資料

既に挙げた物もありますが、以下、参考資料です。

さらなる疑問

『「非営利新型法人」、医療法改正で創設へ|医療維新 -m3.comの医療コラム』『「誰が手を挙げるのか」、非営利新型法人に批判|医療維新 -m3.comの医療コラム』(会員制サイトのため途中までしか読めない場合がありますが、記事のタイトルで検索すると…)において、「医療法人の事業展開等に関する検討会」で提起された疑問や課題がいくつか記載されています。

「医療法人の一類型ではなく、一般社団法人となったことは遺憾」、「果たして誰が手を挙げるのか」など、制度設計やその実効性については疑問の声も上がっています。一国一城の主として独立開業し医療法人の経営者となった医師にとって、連携へのインセンティブが乏しいと。

なお、当制度の実施状況、受入状況については最低5年をめどに評価することになっているそうで、2025年に向けた制度改革としてはギリギリの調整となりそうです。

参考書籍

「地域医療連携推進法人」の詳細を伝える書籍も徐々に刊行されています。

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