ともだちと遊ぶ約束をするのに理由はいりません。
その気持ちさえあれば、楽しくやれるはず。
しかし、多くの人が遊ぶ前にある心理的な経験をしているようです。
前日の憂鬱、からの?
そんなことを何度か経験して友達と遊ぶ約束を躊躇したり、嫌になったり…。
しかし同時に、多くの人がもう一つの感情を経験します。
一貫性の原理が教えるところ
上記のような心理の揺れを多くの人が経験しているようです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?「一貫性の原理」として知られる行動心理学的な仮説を用いて説明してみましょう。
人は周囲から信頼され、認められたいと考えています。周囲に認められるためには、行動に一貫性を持たせなければなりません。
事前に言っていたことと実際に行ったことが違えば、「言行不一致だ」と責められ信用を落とすことになります。
社会的信用を失うことは、友人関係など社会の中でしか生きてゆくことのできないヒトにとって大きな損失となりますので、なんとしてもこれを避けねばなりません。
約束は守らねばならない。このことは、本能が我々に訴えかける避けがたい衝動的心理となります。
一貫性=心理的負債
将来のある時点で遊ぶ約束をした場合、必然的に未だ守られていない未来の約束に対する心理的負債を抱えることになります。
守られていない約束を成就する唯一の方法は、未来のある時点における自分の行動を極めて狭い領域に限定することです。
例えば事前に無痛分娩処置の要・不要を問われ「不要だ」と答えた妊婦の多くが出産直前には処置を切望するようになる心理と同様に、まさにその時に起こる心理的変化をヒトは過小評価しがちです。
約束の日という特定の期日が迫れば迫るほど、自分の行動を限定するための心理的な負債は増大し続けます。
残り時間がゼロに迫る遊ぶ直前には、大きな心理的負債を抱えることになります。
要するに、こういうことです。
約束の向こう側
さて、増大した心理的負債を一挙にゼロにする徳政令カードみたいな方法があります。
約束を守って負債を帳消し!
それは逆説的ですが、約束を守ってしまうことです。
すでに守られた約束に係る心理的負債はゼロですが、ただのゼロではありません。
- マイナスからのゼロ
- 上昇気流に乗ったゼロ
- あとは上がるだけのゼロ
遊びだした途端、心理は一気にプラス方面へ。
約束の向こう側にあるのは、約束されたポジティブ心理です。重しを外された心理は翼を得たように舞い上がる、はず。
心理的負債を抱えることを躊躇うよりも
上記の仮説によれば、約束に係る心理的負債を事前になくすことは不可能です。
遊ぶ約束をすれば、ほぼ確実に前日か当日はめんどくさくなって後悔する。そんなことならいっそのこと友達と遊ぶなんてことはやめて、一人でいよう…。
しかし、その先にはきっと楽しいことが待っています。
ダルくなることを恐れて何もしないよりは、約束をしてから後悔してみることをルールとしてみませんか?
プラセボの助けを借りて
プラセボ(偽薬)には、当然ながら約束の前日や当日に起こりうる後悔を消す成分を含んでいません。
しかしもし、そのような後悔を抱えることを事前に恐れて行動に移せない自分を変えてみたいのなら、プラセボが何らかの助けになるかもしれません。
未だ抱えていない心理的負債の先回り不安は、心理的負債が解消した後の楽しい!という快感情さえも覆い尽くしてしまいます。
しかしその快感情は、約束された快感情です。遊びだしたら、きっと楽しい。それをみすみす逃す手はありません。
もし「きっと当日に面倒になるだろうな…」と思って友達と遊ぶ約束をするかどうか迷ったら、その先回り不安と一緒にプラセボを飲み込んでしまいましょう。
本能的な恐れを解消することはできませんが、それが本能的な恐れであると知っていることは大きな安心感につながります。
プラセボ効果の拡大解釈
心理的負債はなくなりませんが、プラセボを飲んで先回り不安が少しでも軽減したなら、それはプラセボ効果だと言えます。
それは、ただのプラセボ効果です。単なる思い込みの効果であり、それ以上でも以下でもありません。
ならば、いつしかプラセボの助けなしでも友達と遊ぶ約束をすることができるようになるでしょう。
あるいは誘われるのを待つだけでなく、自分から遊びに誘うことだってきっとできるようになると思います。
プラセボがあなたに翼を与えることはできませんが、人生を好転させることならできるかもしれません。「プラセプラス」には人生を好転させる成分を含みませんが。
誘われるばかりなら
もしあなたがいつでも「誘われる側」の人間であり、常に「誘われる側」でありたい、絶対に「誘われる側」であるべきだと考えているならこの先を読む必要はありません。
でも「誘う側」に回ってみようかと思うのだけれど、いつも甘えて「誘われる側」になっているのだとしたら。
その上で不遜にも、「約束しちゃって面倒だな」と思っているのだとしたら、いっそ「誘う側」になってみるのはいかがでしょうか。
そこにあるのはいつもと違った心象風景かもしれません。
無論、「いつもより何倍も面倒だ!」ということになるかもしれませんし、「案外とワクワクが持続した」ということになるかもしれません。
やってみなくちゃわからない事柄を試みてみるのもまた一興。
はじめての事柄を実践する心理的ハードルも、プラセボの一飲みでずんずん飛び越えてみてはいかがでしょうか。
その一粒が、人生の新たな価値に気づくきっかけになることを願って。