育てで初めてすることは上手くいかないのがデフォ。なんてったって、初めてなのだから。
難儀なカプセル
はじめての、カプセル剤
お子さんは日々の経験から何がしかを学んでいきます。
不快感を学習してしまう
そうした学びを得た先にあるのは、父子・母子の果てしなき「飲め」、「いやだ!」の応酬かもしれません。
こうした場合の解決策は既に幾らも提示されていますが、ここではもう少し、プラセボ製薬らしくプラセボ(偽薬)的視点から考察してみましょう。
ちなみに本記事ではソフトカプセルではなく、一般的なハードカプセルを対象としていますので悪しからず。
子どもだから、のめないの?
本記事は子供さんがカプセルを飲めない場合の対処法をお示しする目的で書かれています。
子供も大人も
ただ、こうした状況は「子どもだから」と未成年はもとより、大学生、高校生、中学生、小学生、幼稚園児や保育園児と言った、ある意味では未熟な存在を想定するだけでは不十分なようで。
れっきとした「大人」でも薬剤が飲み込めないとお悩みの方に情報提供しています。
子どもだから飲めない、というわけではないんですね。
特に、飲みにくさの際立つカプセル薬においては。
…というかそもそも、カプセルで服薬する必要があるのでしょうか?
子どもならカプセルは避けるべき?
製薬企業も患者さんの利便性を考慮して医薬品開発を進めており、特に子供にとってはカプセルが当然飲みにくいものと想定しているはずです。
溶解の位置や薬剤溶出速度など特殊な要件を満たす必要があれば別ですが、そうでなければ一般的にはカプセル剤の代替となるものがあるはず。
カプセルが苦手な場合は医師や薬剤師に相談し、剤型の変更を申し出てみましょう。
例えば、発達障害の一例であるADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬「ストラテラ」の場合には、カプセル剤として販売されたのち、新たな剤型として内用液剤が発売されました。
一方、同じくADHD治療薬「コンサータ」では浸透圧を利用した放出制御システムを採用した特殊な錠剤です。これは大きさや形などはカプセルにそっくりなものとして販売されており、この飲ませ方に困っておられる親御さんも多いようです。
OTC医薬品の規定外使用は厳禁
また処方薬とは別に、薬局薬店ドラッグストアで購入できる一般用医薬品、OTC医薬品の場合には「15才未満の小児は使用できない」旨の注意書きがなされている場合があります。
わざわざカプセルという、ある意味では特殊な剤型を選択した理由は「子供に飲ませるな」という暗黙のメッセージかもしれません。あえて飲みにくいカプセルとすることで、誤飲誤嚥を防ぐ意図があるのかも。
親が常用しているOTC医薬品を安易に子供に与えるのは避けましょう。
学習された不信感
カプセルがうまく呑み込めないのは、カプセルが食べたことのない怪しいものだからかもしれません。
何でも口に入れる学習法
乳児や幼児など小さな子供は、手近にあって口の中に入りそうな大きさのものを何でも食べようとして親を慌てさせる時期があります。
これはトライアンドエラーで学習の機会を存分に活かしてその後の人生を豊かにしようとする行為ではないかと考えられますが、この時、恐らくはカプセル剤を飲み込むことはなかったはず。
食べられるもの、食べられないものを選り分けるには、一度味わってみるに限ります。乳幼児期に味わう機会がなかったものは口にすべきではない、と脳はしっかり学習します。
だとすれば、このなんでもかんでもの学習機会を過ぎた後に目につくものは、とりあえず食べることのできない「不審物フォルダ」に入れてしまうと考えてよいのではないでしょうか?
口に入れたことのないカプセルは、アヤシイのです。
不審物は飲み込まないのが正解
カプセルの形状や質感をよくよく見ればなんとなくプラスチックのようにも見えますし、自然でいびつな形とは言い難い極めて人工的な形をしています。
もちろん知識としてカプセルは飲み込んでよいもの、身体に害のないものと知っていたとしても、心の奥底、無意識の領域ではそうはいきません。
いや、まだ小さな子供なら医薬品の必要性もカプセルのなんたるかも、どれほど丁寧に説明されたって納得などできなくっても当然のように思われます。
そうした無意識の毒物警戒シグナルを本能的にビービ―かき鳴らし、喉を閉めて体内への不審物の侵入を防ぐことで我々は生き延びてきました。
カプセルを飲み込もうとして舌の上に残ったり、喉に引っかかったりするのは、飲み込むのがヘタクソだからではありません。
そうではなく、本能的に飲み込んではまずいものだと脳が判断し、的確に排除すべく身体が反応しただけに過ぎないのです。
子どもは毒物排泄力が強いともされています。それは、毒物に対する感受性が高いことの裏返しかもしれません。
「とにかく、ようわからんもんは吐き出してまえ!」と関西弁でまくしたてる脳内のちっちゃなおっちゃんに急き立てられたら、上手に飲み込まないことこそが自然な反応となるのでしょう。
ビー玉は飲み込めない
このことは、カプセル剤をちゃんとしっかりとすっと飲み込める人でも、ガラス製のビー玉を飲み込めと言われれば上手く飲み込めなくなることを考えてみれば分かりやすいのではないでしょうか。
普段食物を喉に通す時、ビー玉以上の大きさの食隗がやすやすと通り抜けていくにもかかわらず、ビー玉そのものは飲み込むことが(普通は)できません。
もっと小さなBB弾(エアガンなどに装てんできるプラスチック製の弾)でも、同じように上手く飲み込むことができないのではないでしょうか。
カプセル剤その他が不審物であるという思いは、たとえそれが思い込みであったとしても我々を守ってくれる進化の賜物として否定すべきではありません。
学習できる脳の可塑性
とは言え、私たちの脳みそは可塑性と呼ばれる性質を持っています。簡単に言うと、「コドモのアタマはやわらかい」のです。
今はまだうまくカプセル剤が飲みこなせなくとも、十分に慣れ親しめばちゃんと飲めるようになります。
ここから先は、カプセルが上手く飲めない悩みの根本的解決法を探ってみましょう。
空カプセルを偽薬として活用
カプセル剤を上手く飲めるようになる。
子供にも実施可能なそうした対策があるのでしょうか?
偽薬(ぎやく)を使って練習すればそれが可能かもしれません。
偽薬とは無論、薬効成分や有効成分を含まないクスリのニセモノのこと。プラセボとも呼ばれますね。
ここでは、カプセル剤の偽薬としてカラのカプセルを想定しておきましょう。こうした空のカプセル殻はAmazon.co.jpで手軽に入手できます。
空カプセルの色
空のカプセルと言っても色々と取り揃えられており、透明の物
白いもの
色つきの物
色に関して大きく分けるとこの3つでしょうか。
オススメは「ホワイト」もしくは「色つき」です。
空カプセルの素材
全部を確かめたわけではありませんので、あくまで参考という意味での情報提供となりますが、カプセルの素材は以下のように纏められるようです。
- 透明→ゼラチン(※)
- 白色→セルロース
ちなみに「ゼラチン」はコラーゲンから抽出されたタンパク質で、お菓子づくり、特にゼリーを固める際などに用いられます。
また「セルロース」は化学構造的には炭水化物(多糖類)にあたるもので、一般的には「食物繊維」と呼ばれています。
当然のことながら、どちらも食物由来の成分を加工して成形したものが空カプセルとして販売されているということになります。
脳みそはその見た目から「不審であり、不信である」と警報を鳴らすかもしれませんが、こうした食物由来であることをきっちりと理解することから練習を始めましょう。
※透明の物の中には「コーンカプセル」という植物由来成分製のものもあります。これは「ゼラチン」ではなく「デンプン」由来の成分のようですが、もちろん食品素材として食べても害のないものです。
空カプセルの大きさ
また大きさもバリエーションが豊富に用意されています。「ホワイト」のものを小さい方から順に並べてみましょう(※最大の「000号」は透明カプセル)。
- 松屋 セルロースホワイトカプセル 5号 60個入
- 松屋 セルロースホワイトカプセル 4号 60個入
- セルロースホワイトカプセル 3号 60個入
- セルロースホワイトカプセル 2号 60個入
- セルロースホワイトカプセル 1号 60個入
- セルロースホワイトカプセル 0号 60個入
- セルロースホワイトカプセル 00号 60個入
- HFカプセル 000号 100個(※)
数字が小さいほど、カプセルは大きくなるという号数指定がなされています。
カプセルが全然飲めないという方は、小さい5号品をつかって練習されるのが良いのではないでしょうか。子供さんの場合には1号まで飲めれば通常の医薬品で困ることはありません。
アマゾンで商品一覧を確認したい方は、以下のいずれか、もしくは両方が参考になるでしょう。
実際の練習法
さて、練習用の空のカプセルを手に入れたら早速練習を始め、脳の再学習機構を働かせましょう。
基本方針は、慣れる。これだけです。
さらに、行動心理学の世界で言われる社会的証明の原理を採り入れましょう。
社会的証明とは
社会的証明とは、子供がカプセルを飲めるようになる方法の場合に則して具体的にいえば、お父さんやお母さんもカプセルを飲んでいるということを子供に見せる事に当たります。
私たちは世界の何ごとに対しても客観的な価値基準をもち、随時適用しているわけではありません。判断の付かない何ごとか(「この物体は飲み込んでも安全か?」など)に対峙するとき、最も有効な判断基準は他人も同じようにしているか否かをみることです。
要するに、「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」の精神と言えるでしょうか。
「カプセル剤 みんなで飲めば 怖くない」
この標語を実践する方法はただ一つ。お子さんと一緒に、下記の慣れ手順を踏んでみることです。
矯めつ眇めつ(ためつすがめつ)
さて、慣れるためにまずは空のカプセルを手に取り弄び、ためつすがめつ姿を検めて視覚情報として脳に叩き込みましょう。
匂いも嗅いでおきましょうか。
じっくり見てみると、先ほど挙げたパッケージに書かれているように「のどにやさしいつるり感」が感じられますね。
ちょっと目を閉じてこのカプセルが喉を通るところをイメージしてみましょう。
どんな場合でも、想像した以上のことは実現しません。いつだって想像したことが実現するだけなのですが、このカプセルを巧く飲み込むに当たってはそれで十分。
しっかりとイメージトレーニングをしてみましょう。
「ごっくん」や「ごくり」といったオノマトペ(擬音・擬態語)を駆使するのも忘れずに。私たちのイメージは言葉によって形作られます。お子さんといしょにイメトレする場合には、年齢に合わせた語彙をまぁ適当に選択してあげましょう。
舐める
次におもむろに口の中に放り込み、アメ玉のようになめまわしてみましょう。
ゼラチン製の透明カプセルとセルロース製の白色カプセルを両方購入し、その違いを楽しむのも良いかもしれません。
とにかく、口の中に入れても良いのだという慣れを脳内学習しましょう。
お勉強が身についている人は何かを覚えたり計算したりといった能動的な行為を「学習」と考えるかもしれませんが、実際のところ私たちの生活にとってより重要で本質的な事柄はこうした受動的な「慣れ」によって獲得されます。
カプセル剤でも、それは同じこと。
慣れるまで、舐める。
これを実践してみましょう。毎日継続しましょう。慣れは早ければ当日、遅くとも数日~数週間のうちに得られるかと。
遊ぶ
カプセルのカプセルたる特性を最大限に活かして口の中で遊んでみるのも一興でしょうか。
閉じた状態のカプセルを口に含み、唇と舌を使って開けてみる。
そうした遊びをお好みで採り入れてみてください。
慣れるための最良の方法は「楽しむ」です。
大いに遊び、大いに楽しみましょう。
そのまま飲む
カプセルそのものを舐め慣れ、噛み砕いたら飲める状態になれば、あとそのまま噛まずに水だけでゴクリ飲み干せるかもしれません。
おめでとうございます。小さいカプセルを一廻り大きくして再チャレンジしてみましょう。
まだ水だけで飲むのが難しいようなら、服薬ゼリーで潤滑性を付加してスルリ飲み干せるようにしてみましょう。
カプセルを埋め込んでしまうほどゼリーをたっぷり使うと良いようです。
飲み干す
さて、いかがでしょうか。うまく飲むことはできましたか。
まだできない?
とすれば、カプセルを上手く飲み干すためだけに発明された商品『おくすりこくり』を頼ってみましょう。
この商品はおくすり一気飲み仕様の「おくすりポケット」が付いていますので、そこにまずは服薬ゼリーを載せ、カラのカプセルを置き、再度ゼリーでサンドイッチ。
あとは水と一緒にスルリ飲み干すだけ、という簡単設計。
コツがあるとすれば、カプセル入りのゼリーではなく、その向こうにある水をそのまま飲もうとすること…ですが、これにも慣れが必要かもしれませんね。根気よく取り組んでみてください。
カプセルは気から
いかがでしたでしょうか。
カプセルを上手く飲み込むことは、実は普通に当然に出来ることではありません。子どもに限らず、オトナにだって難しいことなのです。
この困難を精神論や道具を使ったテクニカルな手法で超えることはもちろん可能でしょうが、それよりもまず取り組むべきは気持ちの問題のはず。
だって、不審物を飲み込まない、飲み込めないのは本能的なリスク回避の手段なのだから。
お子さんも、単純なごまかしには気付いて態度を硬化させてしまいます。本能的に。
カプセルを巧く飲むには、それを飲み込めるものだ、飲み込んでよいものだと思い込めるように自らを仕向ける脳の再学習が必要だったのです。
偽薬を使えば、それができるはず。
クスリを好きになる必要はない
と、ここまで書いてきたことをちゃぶ台返しのごとくにひっくり返すようですが、お子さんが健やかに過ごすために親御さんができることはカプセル剤を上手に飲ませるよう教育やしつけを施すことではありません。
クスリなんてニガテでキライなままの方が、むしろ好ましいとさえ言えます。
大人の市販薬依存
プラセボ製薬では錠剤状の偽薬を販売していますが、時々、お問い合わせをいただくことがあります。
などなど。
薬好きというのは、まったく好ましいことではありません。
そもそも自分の身体に、自身の健康に自信を持つことができないために、医薬品など外部の何かに依存しなければ精神の安定を保てない状況のようです。
それって、健康ですか?
自分自身を信じるチカラを育んで
子育てにおいてカプセル剤を飲めるようになることより重要なのは、お子さんが自分自身のココロとカラダを信頼できる自尊心を育むことのように思われます。
健康とは。
治癒とは。
難しい話ではなく、人間に備わった自然治癒力・自己治癒力を肯定する考え方をお子さんと一緒に考えてみましょう。
薬は、自然治癒力をサポートするものでしかありません。
カプセル剤との良いお付き合いができますよう。