認知症予防に歩幅&テンポを気にして歩く

雑踏の中で目を閉じて行き交う人々の足音に耳を澄ませてみれば、そこには様々な種類の足音があることが分かります。そして、一つの事実に気が付くでしょう。

足音から、その人の年齢をほぼ正確に推測できる。

歩き方や足音は如実に年齢を物語ります。静止時の見た目(=鏡で見える姿)に気を配るご年配の方は増えていますが、自身の歩き方にまで気を配っておられる方はそう多くありません。

しかしもし、歩き方や足音を変えるだけでアンチエイジング効果が現れるとしたら?

歩幅を広げて、軽やかな足取りで軽快な足音を響かせてみませんか?

認知症予防と歩き方の関係

「NHKスペシャル シリーズ認知症革命第1回」(2015.11.14放送)のテーマは、「ついにわかった! 予防への道」

MCIからの対策

認知症予防研究の最前線では、MCI(軽度認知障害)と呼ばれる認知症の一歩手前、痴呆予備軍の段階で発見し早めの対策を実行できれば、認知症への進行を緩やかにできるとされています。

そのMCI発見法の一つが、「歩き方」を見ること。

歩行動作に現れる老人らしい歩き方の兆候と、歩く速さに着目してMCIの早期発見、早期対策を目指す。

そんな研究が紹介されました。

転倒予防にも

認知症を急激に進行させるのは「寝たきり」での入院生活だそうです。そして、寝たきりの最も大きな原因が「骨折」

しかもスポーツや危険な動作を行ったり、事故に遭った結果やむなく骨折に至るのではなく、お風呂の入浴や階段昇降など日常動作のなかでちょっとした弾みで転んだりして骨折してしまい、そのまま寝たきりとなる方が多いそう。

歩き方を見直すことは、転びやすい立ち方や歩き方を修正し、ひいては歩行運動そのものの身体活性作用、精神賦活作用が認知症を予防してくれることに繋がるものかもしれません。

上記のNHK番組でも、MCIの方の歩き方の特徴として足の裏の圧力が一定せずフラフラとふらつきやすくなっていることが指摘されています。

目線と姿勢を意識する

はてさて、歩幅を広げて上手に歩くコツは、背筋を伸ばして胸を張ることにあります。

背筋ピーン!

それは、背筋を伸ばすと、重心の移動がスムーズに行えるからです。重心のスムーズな移動は、軽快な歩行動作に欠かすことができません。

正しい姿勢は、バランスの良い姿勢です。バランス感覚は閉眼片足立ちでテストすることができます。

バランスが極端に悪い場合、杖を使わないと立っていられなくなり、手押し車が手放せなくなります。

また転倒を恐れるため、常に目線が地面へと向かいがち。下を向き背中が曲がった姿勢は重心を前方に寄せてしまい、さらなるバランス悪化をもたらすでしょう。

目線の先にあるものは?

日常生活で歩く動作をしている時、何が目に入っていますか?

  • 自分の靴のつま先
  • 手押し車の持ち手
  • 道路に落ちている10円玉
  • 前を歩く人のおしり
  • すれ違う異性と目が合っちゃってドキドキ

姿勢が良くなると、前へ前へと意識が向くようです。誰とも目を合わせたくないからとうつむき加減に歩いていると、猫背なその姿勢が固定化されてしまうかも…?

歩行時の姿勢を修正する際、まずは「いつも何を見て歩いているのか?」を意識することから始めてみましょう。無意識のクセを意識化するわけです。

無意識の癖を意識化したら、今度は意志の力でもって姿勢を正し前を向いて歩くよう心掛ける。そうすれば電柱にぶつかることもちょっとした段差やへこみ・ふくらみに足がとられて転倒することもめったに起こらなります。

目線を上げ胸を張ると重心は安定化し、歩幅も自然と無理なく拡張されるはず。ひょこひょこ歩きを改善する第一歩は、しっかりと目線を上げることです。

歩幅を広げる

ところで、一体どうして高齢者は歩幅が縮んでしまうのでしょうか?加齢と共に歩幅が狭くなる理由はいくつか考えられます。

  • 筋力の低下
  • 柔軟性の低下
  • バランス感覚の低下
  • 自己認識の変容

「目線を上げ、歩幅を広げて歩いてみよう」という心掛けは、これらを克服する第一歩としてふさわしいものに思われます。明確な意識は、身体的・精神的変化をゆっくりと導きます。

筋力と柔軟性とバランス感覚と

筋力の維持・向上はおそらく死ぬ間際まで可能です。栄養失調にならぬよう、適切な栄養を摂取すること。また歩くことをはじめとする身体運動が筋力および柔軟性とバランス感覚を維持・向上してくれるので、おっくうがらずに運動を続けること。

ちゃんと歩くために、しっかり歩かなければならない。

このパラドクス(矛盾)、鶏が先か卵が先かの終わりなき議論を超えるもの。それは、実際に歩きだしてみることです。

できれば、楽しみながら。

楽しく歩くためには

楽しく歩くために必要なことは、これまでに書いた意識に加えて数値化できる要素を選び出すことです。流行り言葉で言えば「見える化」が娯楽的歩行(≒楽しいお散歩)を続ける要。

そりゃオメェ、歩くっつんだから「歩数計」でしょ?

いいえ、違います。歩数のような積み上げ系の数値を目標とすることは、ご存知の方が多いかもしれませんが、結構ハードで心が折れてしまいがちなのです。

「1日1万歩で健康に!」と言われてどれだけの人が続けられたかって、そりゃもう、ねぇ?

となれば、別口で「見える化」の道を探るしかありません。別口とは何か?

「テンポ」です。

テンポを上げる

歩くという動作は、いくつかの基本動作の組合せとその繰り返しによって構成されています。

テンポ、拍子、あるいはスピードと言い換えても良いかもしれませんが、一つ一つの動作を早めることが出来れば歩き方は決定的に変わってきます。

右足を着地し、左足を浮かせて前方に着地し、また右足を浮かせて…という繰り返し動作の1単位(繰り返し1回分)の早さを音楽用語を用いてテンポと呼びます。

歩行の場合、1歩、2歩、3歩、4歩と数えるその一つ一つを1単位と考えてよいでしょう。

テンポの早め方

では、どのようにテンポを早めればよいでしょうか?

一つの方法は、前を歩く人に着いて歩いてみることです。自分よりも早いペースで手足を動かしている人を見つけたら、それに合わせてみましょう。もちろん目的地まで着いていく必要はありませんが、その歩き方をそっくりそのまま真似してしまうのです。

またもう一つの方法として、テンポを刻む器械、すなわちメトロノームで歩くペースの練習をしてみましょう。

まずは自分の通常時の歩行ペースを知り(1分間に○○歩、など)、徐々にメトロノームのペースを上げてそれに合わせて足踏みします。同様に、腕を振る練習も行います。

続けていれば、きっと変化に気付くはず。

スマートフォンにアプリを入れるなんてお茶の子さいさいなあなたなら、「メトロノーム・アプリ」をスマホに導入してお出かけしてみてはいかがでしょうか?

テンポは徐々に上げるもの

なんだってそうですが、急激な変化は無理を伴います。若いつもりで元気が自慢でも、無理はダメ、ゼッタイ。

メトロノームの設定はいつもよりちょっと遅いくらいからはじめて、徐々に徐々にゆっくりと上げていきましょう。また長い目で速くすることを目指せばよく、気持ちよく歩ける速さを継続することを心掛けましょう。

ピッピッピッピッピッピッ…

NHK特番では「秒速80 cm」とか「時速2.9 cm」などMCIから認知症へ移行しやすい方の数値目安が示されていましたが、あんまり真面目くさって目標数字を追いかけるなんて営業社員のノルマでもないので、より楽しむことを考えられた方が良いかもしれませんね。

継続する、その力

「継続は力なり」とはよく聞く言葉ですが、それがいかに難しいことかは皆様ご承知の事と思います。

継続を、偽薬で見える化

偽薬を使って、そのハードルをいくらか下げることができます。外に出る前にプラセボをコップ一杯の水で飲み「よし、歩き方を意識して歩いてみよう」と思うだけで、いつもの散歩がアンチエイジング散歩に早変わり。

介護用偽薬として、薬を飲みたがったり飲み過ぎたりする認知・痴呆症高齢者向けに販売している「プラセプラス」は、食品成分のみで製造された安全なプラセボです。

プラセボで、好奇心に満ちた実験精神を日常に採り入れてみませんか?ぜひ一度、お試しあれ。

ちょい足しウォーキング

NHKスペシャルで提案された「ちょい足しウォーキング」。いつもより5センチメートルだけ歩幅を広げて歩くことを意味するそうです。

こうした“忘れやすい”課題もまた、「プラセプラス」の得意とするところ。ラベルに「+5 cm」とでも書いて出かける前に飲むようにすれば、嫌でも思い出させてくれます。

ぜひお試しください。