『介護起業』は若者起業家へのエール?社会福祉法人へのリクルート?

社会福祉法人の理事長である杢野暉尚氏が若者に対して介護関連事業への参入を促す書、『介護起業』(幻冬舎)。

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Amazonの紹介ページより引用。

内容紹介
2025年には人口の約半分。10人に4人が高齢者の時代が到来。起業家を目指す若者よ、成熟社会に残された「21兆円市場」に瞠目せよ! 日本はかつてない超高齢化社会を迎えています。65歳以上の高齢者人口は、2013年に過去最高となりました。今後も高齢化は加速し、国民の3人に1人が高齢者になる時代が目前に迫っています。介護業界は、そのような社会環境の中で誕生した、比較的新しい業界です。そして高齢化に伴い、2025年の介護市場はなんと21兆円の巨大マーケットになると予測されています。ここにビジネスチャンスが眠っているのです! 本書では、介護業界で起業することのメリットや方法、そして何より成功をつかむノウハウを具体的に紹介していきます。ビジネスチャンスを手にできるのは勇気を出して踏み出した者だけです!!

内容(「BOOK」データベースより)
起業家を目指す若者よ、成熟社会に残された「21兆円市場」に瞠目せよ。2060年には人口の約半分、10人に4人が高齢者の時代が到来。介護起業で成功するための全ノウハウ。

介護業界を志す方にとっては、特に起業してみようかと考えている方にとっては読んでおいて損なし。

介護業界の現状と未来

現状認識

介護分野に関しては、医療と同様に日本の社会保障制度の重要な部分を担いつつ、将来的には社会の根幹を揺るがしかねない危険性をも秘めています。

高齢者の数が急速に増えつつ少子化がさらに進展する未来の日本においては、介護に掛けられるヒト・モノ・カネの全てが不足することが人口動態予測からほぼ確実に予測できるためです。

介護業界の市場規模はますます拡大するのですが、これまでに出来上がった介護保険に関する制度の枠組みだけでは立ち行かなくなってきますし、財源の4割を公費に頼っている状況は既に立ち行かなくなっているとも言えるかと思います。

こうした現状認識を受けて、介護給付はますます減っていくでしょう。

未来は?

介護保険制度を支える財源に関しては、上記のように制度設計の見直しが進められています。

また人材に関しても、外国人の教育・受け入れ等の議論が進められています。これは足りない人手を外国から賄おうというだけの施策ではなく、日本の介護技術等をビジネスとして海外へ輸出することなどとも関連しているものと思われます。

介護分野での起業を考える際に、長い時間スパンで将来を見ると日本の市場は拡大するものの、競争は激しくなり数十年で高齢者の数も頭打ちになります。海外へ目を向ければより大きな市場が待ち受けているでしょう。

ただ、様々な分野で同じようなこと(「海外進出で市場拡大!」、など)が言われてきましたが、全部が全部上手くいっているわけでないことはご承知の通りかと。介護分野でも上手くいくか否かは未知数です。

起業を目指すなら、まず飛び込め?

さて、杢野氏が「私の法人」として本書中で何度も紹介する「社会福祉法人サンライフ」および「社会福祉法人サン・ビジョン」。いずれも「社会福祉法人」です(法人の代表者が「私の法人」と指示することに違和感がないでもないですが、まあ措くとして)。

起業を志す方でもそれほど「法人」について詳しくない方も多いのではないでしょうか?

「社会福祉法人」は高齢者福祉(介護)・障碍者福祉・児童福祉など公益にかなう事業をおこなう法人であり、「株式会社」に代表される営利法人とは趣が異なっています。

特に施設介護において介護老人福祉施設(=特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設は「社会福祉法人」など営利が第一目的でない法人しか設立・運営できない仕組みになっています。

起業家の多くが「株式会社」を設立して介護業界へ飛び込むことを考えれば、こうした違いについて知っておくのも悪くないでしょう。その具体例が『介護起業』には示されています。

まず、職員として働け

杢野氏は言います。介護業界で起業するなら、まずは質の高い法人で働きましょうと。特に複数の施設を有する社会福祉法人がお勧めですよ、と。

直接的に書いてあるわけではありませんが、本書はまるでリクルート本であるかのように、杢野氏が代表を務める社会福祉法人で働きたくなってくる記載がいくつかあります。

「ウチのとこに来なさいね。悪いようにはしないから」

それほど、人脈や経験が物を言う世界ということかと(どこの業界でも同じですが)。

介護報酬に頼らない仕組みづくりを

また、今後の介護保険制度の流れを読むべきとも訴えます。介護報酬は漸次減額される可能性が大きいため、保険収入に頼った運営には未来がない。保険外収入を如何にして増やすかが介護業界で生き抜く秘訣だと。

介護保険外サービス(=要介護者やその家族が全額自己負担するサービス)の充実、介護周辺事業としてのシルバー産業の発展は「これから」です。

平成27年度中(2016年3月まで)に厚生労働省が主導して策定される「保険外サービス活用ガイドブック(仮称)」が参入拡大の契機になると目されていますが、介護保険制度が立ち上がった当初より経営基盤を盤石にする保険外サービスの重要性を訴えてきた杢野氏の主張を参照しておくと尚良いでしょう。

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介護事業の経営に興味がある方も是非。