製薬会社にとってプラセボやプラセボ効果のことが一般に広く知れ渡るのは些か困る…かどうかは分かりませんが、これらの語彙について認知度を高めることにそれほど重きを置く必要性がないことは容易に推察されます。
推察、だけでは面白くありませんので実際に調べてみました。
売上高ランキング上位10社を調べてみた
業界動向サーチさんの製薬業界ページを参照し、平成24-25年における日本の製薬業界売上高&シェアランキングTOP10社を選定。該当製薬各社のWebサイトにおける「プラセボ」の記載を主にサイト内検索により検索しました。
情報収集漏れなどの可能性がありますので、予めご了承ください(誤表記等は修正いたしますので、もし発見されましたらご連絡ください)。
会社名 | 表記 | 用語解説 | 個別ページ |
---|---|---|---|
武田薬品工業 | プラセボ | ○ | ○ |
アステラス製薬 | プラセボ | — | — |
第一三共 | プラセボ | — | — |
大塚ホールディングス | プラセボ | — | — |
エーザイ | プラセボ | ○ | ○ |
田辺三菱製薬 | プラセボ | ○ | — |
中外製薬 | プラセボ | ○ | — |
大日本住友製薬 | プラセボ | ○ | ○ |
協和発酵キリン | プラセボ | △(PDF内) | — |
興和 | プラセボ | — | — |
表記に関しては「プラセボ」で統一されていました(「プラセボ(偽薬)」もあり)。
全社が参照する日本製薬工業協会という上位機関や、公的機関たる厚生労働省の影響でしょうか?
アステラス製薬など、偽造薬という意味で「偽薬」の語を用いている例もあります。
武田薬品工業は日本製薬工業協会(製薬協)からの転載、またエーザイや大日本住友製薬では一般の方向けにくすりのこと紹介するサイトを運営しており、そちらで詳しく「プラセボ」を解説しています。
またWeb上に記載がないだけで、実際にくすりのあれこれを見たり聞いたり触ったりして学習できる施設を運役している製薬企業の中には、そちらではバッチリ「プラセボ」を解説していたりするのかもしれません。
解説の中身はどんなもの?
「プラセボ」に関する各社の解説はサラッとしたものから、製薬協の記載をベースに臨床試験での利用や、「プラセボが効いちゃうこともあるけれど、くすりの優位は揺るがないよ?」という製薬企業の立場と存在意義を明確に述べたものまであります。
各社、解説はしなくとも
「プラセボ」の用語解説がない企業がたくさんある背景には、「プラセボ」がすでに一般に認知されているという思いがあるのかもしれません。
と言うのも、臨床試験における「プラセボに対する優越性」、「プラセボに比べ有意な有効性」、「プラセボ並の副作用(安全性)」などの記載が用語解説なしになされている傾向が全社に見られるからです。
単に、勝手知ったる医療従事者向けの資料だからかもしれませんが…。
うん、10年ほど前の調べでは「プラセボ」を知らなかった人が7割と、全然認知されてませんね(参照:日本製薬工業協会『プラセボ効果とは何ですか?|治験啓発パンフレット』)。
さらに視線を拡げてみたらば
10社に限らず、Web上で情報提供をされている企業はたくさんあります。
なかでもMSDが提供する『メルクマニュアル』と、大和薬品が提供する『ワールドヘルスレポート』内のプラセボ記事は詳細かつ、他には見られないオリジナルな記載が為されており、一見の価値があります。
1785年に、プラセボという言葉が初めて医学辞典に載りました。
『メルクマニュアル医学百科 家庭版』
1785年と言えば江戸幕府の第10代将軍、徳川家治の治世…といっても何もイメージが湧きませんが、何だかすごいですね。230年前に記載があったとは、初めて知りました。
プラセボの認知向上を
プラセボやプラセボ効果の有用性を地道に伝え広めていこうと弊社では考えています。7割の人がなんとな~く、プラセボやプラセボや偽薬やそれらを知っている社会を目指して。
製薬業界の離れに潜むプラセボ製薬は、最新版の業界地図を仔細に眺めても見つかりません。悪しからず。