国内屈指の研究・教育機関である東京大学は、多様な「知」を生み出し社会へ還元することを重要なミッションの一つに掲げています。
東京大学では、毎日新しい知が生産され、世界中の知が行き交っています。
この場で生まれた「知」を広く社会につたえ、還元することは、東京大学の社会的義務と考えています。
その取り組みの一つが、「東大TV」。
講演録を無料で一般公開する太っ腹企画内にてプラセボ効果に関連する、とても面白い動画がありましたのでご紹介。
東大TV
と、その前に。「東大TV」自体があまり知られた存在ではない気もしますので、紹介を少し。
ドメイン
「東大TV」はインターネット上に開設されたウェブサイトです。URLは以下。
「.tv(ドット・ティーヴィー)」という、まさに動画コンテンツ向けのドメインを取得しているようです。
細かい話で恐縮ですが、英文字表記では「UTokyo TV」となっており、ドメインとの整合性を採らない・採れていない形になっちゃってますね。
東大TV(UTokyo TV)へようこそ!
東大TVについて
東大TVは、東京大学で開催された多彩な公開講座や講演会を動画でお届けする大学公式ウェブサイトです。
会員登録も費用も不要で、どなたでもご覧いただけます。
「利用条件」を見ますと、
東京大学の英語名称の統一化に伴い、2014年5月に東大TVのロゴの変更を行いました。
利用条件
として、何やらその原因らしき記載が見つかります(詳細は不明)。
YouTubeへ進出
「東大TV」はどうやら2005年に開設されたようです。当時から「iTunes」上でも動画を公開するという先進的な取り組みをされていたようで。
最近(2016年11月2日~)ではYouTubeでも動画がアップされるようになりました。
東大TV / UTokyo TV
https://www.youtube.com/channel/UCGkctuF55veBi7xDGCgcYkw/
思ったように視聴数が伸びないための施策だと思われますが、YouTubeの紹介文に「YouTubeでは見られない動画がたくさんあります!!」として本サイトへリンクを張るあたり、本サイトの利用拡大が主な目的なのかもしれません。
テーマ講座「だます」
はてさて肝心のプラセボ効果関連動画ですが、東京大学で開催された一般向け公開講座の講演録として収録され、改めて東大TV上でオンライン公開されたものです。
実は当講座は2011年のテーマ講座として一つの主題に対し様々な学問分野から切り込むという企画の一環だそうです。
お題は、「だます」。
「偽薬・プラセボ」を採り上げるには、まさにうってつけのテーマでしょう。面白くないわけがない。
他の講座も興味津々
「偽薬・プラセボ」をこの後詳しく見ていきますが、その他の講座も興味深いものばかりです。なんてったって「だます」がテーマですから。
偽薬・プラセボ
さて繰り返しになりますが、東京大学公開講座「だます」。
その第4回「医療におけるだまし~だますことで生命を救う~」は、東京大学大学院薬学研究科・医薬政策学の津谷喜一郎特任教授(当時)による「偽薬・プラセボ」と題された演目。
50分にわたるその講演は日本国内のプラセボおよび臨床試験研究史をひも解くうえで大変重要なものであり、また興味深いものです。
なお、津谷先生の業績等はresearchmapより見ることができます。
紹介にあたって
もちろん講演の全体をお聞きいただきたいと思いますが、「50分の動画視聴は長すぎる!」という方のために、講演スライドの見出しタイトルと短いコメントを掲載しておきます。
抜け、漏れがあるかと思いますがご容赦を。
また講演音声の書き起こしではありませんのでご注意を。
15~16分の動画3本に分けて公開されていますので、興味があるテーマを見つけて是非講演に聞き入ってください。
医療におけるだまし -だますことで生命を救う-
偽薬・プラセボ
追記
2019年5月現在、3本の動画は1本にまとめられたみたいです。全編46分50秒のみ。
下記の編分け、タイムスケジュール記載は動画3本の場合のものになりますので、適宜換算してください。
前編(16:10)
- 偽薬・プラセボ(表題)
- “プラセボ”の認知
- 調査の概要
- Who am I?
- 写真(パプアニューギニアの呪術医)
- clinical trial
- 臨床試験の類義語
- 無作為抽出とランダム割付け
- 世界で最初のRCT:ストレプトマイシントライアル
- 中国ハルピン近郊の731部隊罪証陳列館に掲示されている供述書ー1941年にランダム化比較試験が行われていた可能性ー
- 写真(第11回日本医学会総会@東京大学)
- 無作為抽出とランダム割付け
- コントトール(比較対照)※
- 写真(placeboを含む製剤見本)
- コントトール(比較対照)と病気※
- 写真(「エレン®錠」広告パンフレット@メディカル朝日)
- 写真(「脳疾患4薬 効かず」と題する朝日新聞一面記事)
- エレン(インデロキサジン)
- 図表(抗痴呆薬とその対照薬@正しい治療と薬の情報)
- 写真(「エレン®錠」広告パンフレット+吹き出しコメント)
- 仙台市立病院薬代金返済等代位請求事件
※「コントトール」は「コントロール」の誤記載と思われる。
プラセボと医薬品にまつわる驚くべき逸話を紹介する、偽薬・プラセボ(1/3)。
中編(14:42)
- コントトール(比較対照)と病気※
- ヘルシンキ宣言ソウル修正版2008
- Revival of Placebo
- エビデンスに基づく医療(Evidence-based Medicine:EBM)とは
- 各国語のplacebo
- 写真(学術誌『JAMA』表紙)
- 写真(「THE POWERFUL PLACEBO」と「有力な囮薬」)
- 広辞苑(第5版, 1998)
- Placebo ⇒ 偽薬(ぎやく)?
- 図表(「THE POWERFUL PLACEBO」よりTable2)
- Beecher: Powerful Placebo(1955)のもたらした誤解
- regression to the mean(平均への回帰)
- 写真(「PLACEBO」用例ページ@オランダ『FARMACOTHERAPEUTICSCH KOMPAS』)
- 写真(表紙@オランダ『FARMACOTHERAPEUTICSCH KOMPAS』)
※「コントトール」は「コントロール」の誤記載と思われる。
日本国内におけるプラセボ研究の黎明期に光を当てる、偽薬・プラセボ(2/3)。
後編(16:16)
- 米国の診療でのplacebo使用
- Example of Surgery as Placebo(プラセボ手術の例)
- Oxford English Dictionary(First Edition, 1933)(オックスフォード英英辞典第1版)
- Increse of notes in OED from 1933 to 1989(1933年から1989年にかけての記載増量)
- Placebo
- ラテン語訳からの日本語訳(光明社, 1957)
- 聖書 詩篇 114編9節(新共同訳, 1987)
- ギリシャ語訳(70人訳, BC3-BC1)
- 現在のヘブライ語の聖書
- First English translation(はじめての英訳)
- 写真(表紙@英訳聖書『HOLIE BIBLE』)
- Placebo: 歩む⇒喜び
- なぜ日本で「偽薬」というネガティブな意身をもつ訳が用いられ定着したか※
- 相反するプラセボの役割
- 福沢諭吉:太政官第51號布告(1882)
- 写真(「移精変気論篇 第十三」)
- 写真(「移精変気論篇 第十三」現代語訳①)
- 写真(「移精変気論篇 第十三」現代語訳②)
- 写真(「咒禁科」記載例)
- 写真(「祝詞(のりと)」記載例@広辞苑)
- Placeboの日本語訳は?
- Nocebo effect(ノセボ効果)
- Placebo⇔Nocebo
- 写真(抗エイズ薬臨床試験結果:死亡数@『NEJM』)
- 写真(抗エイズ薬臨床試験結果:QOL@『NEJM』)
- 写真(水戸芸術館展示案内@朝日新聞)
- 写真(展示「無題(偽薬)」遠景)
- 写真(展示「無題(偽薬)」近景)
- 写真(展示「無題(偽薬)」入口)
- 写真(展示「無題(偽薬)」入口より)
- 東京大学医学部学生に対する偽薬/安慰剤アンケート(1997)結果1
- 偽薬/安慰剤アンケート(1997)結果2
- 結果(つづき)
- CRC連絡協議会
- 治験薬か○○のいずれかを服用することになります。○○は「偽薬」と「安慰剤」のどちらがいいか
- Placeboの日本語訳は?
※「意身」は「意味」の誤記載と思われる。
Placeboの語源から「偽薬」に替わる最適な日本語訳を探る、偽薬・プラセボ(3/3)。
いかがでしょうか。
興味あるテーマがありましたら、ぜひ動画をご参照ください。全て見る方は、下記リンクより。