認知症カフェに対する関心・期待が高まっています。
特に認知症カフェの運営を検討されている方は、「補助金」や「助成金」に興味があり調べておられる模様。
より詳しく調べたい方向けの情報を記載します。
地域包括支援センター
実は、現在の介護保険制度の根本を為す思想として「地域包括ケアシステム」という考え方があり、これに基づいて各施策が実行されています。
「地域包括ケアシステム」は名前の通り地域に根差す、地域の特性に合わせたシステムであり、その実施主体は必然的に市区町村ということになります。広域を担う国や都道府県ではありません。
したがって、認知症カフェを開設・運営しようとする方が補助金や助成金について知りたいなら、まず相談すべきなのは「市区町村の対象部局」、あるいは市区町村が運営(委託)する「地域包括支援センター」ということになろうかと。
地域包括支援センターは、介護保険制度の基礎となる地域包括ケアシステムの要ですので、厚生労働省が各都道府県へリンクを張る形で紹介しています。
各都道府県のリンク先ページから、地域包括支援センターの一覧が手に入るかと思います。お住まいの、あるいは認知症カフェを開設しようとする市区町村のセンターへご連絡ください。
予算
各市区町村はその予算に従って施策を実行します。したがって、自治体の財政状態によっては認知症カフェなど高齢者福祉事業を積極的に推進出来るかもしれませんし、逆に厳しいお財布事情の場合にはあまり補助・助成は期待できないかもしれません。
各自治体の議会ウェブサイトには議事録などが公開されている場合がありますので、ご参照ください。
予算の源流をたどる
ただし、少子高齢化が進展する日本国には財政事情に余裕のある地方自治体なんてほとんどありませんので、その歳入を国庫からの補助にいくらか頼っています。
国から地方へ渡る「国庫支出金」は円グラフの黄色部分を占め、それなりの額になっています。
したがって、国の政策が市町村の施策を大きく左右することになるわけで、こちらを事前に確認しておくのがベター。国のお金の使い道、すなわち、「予算」の調べ方を見ておきましょう。
国の予算の調べ方
国の予算は国会による審議を経て成立した後、執行されます。
財務省のホームページより、「平成27年度(平成27.4 – 平成28.3)」の予算関連日程をいくつか拾ってみます。
- 各省各庁の概算要求(平成26年9月3日)
- 政府案閣議決定(平成27年1月14日)
- 政府案国会提出、審議開始(平成27年2月12日)
- 予算成立(平成27年4月9日)
色々な言葉がありますが、まず各省各庁が「概算要求」を出し合い、折衝の上政府案としての「予算案」が固められ、国会審議を経て成立、執行されていくという流れを押さえれば大丈夫かと。
認知症カフェに関わる未来(来年度)の話は、所管省庁である「厚生労働省」が毎年8月末までに出す「概算要求」にて大まかに把握でき、「予算案」として承認されると具体化の道がハッキリとしてきます。
ちなみに、本記事公開の平成28(2016)年3月3日時点では、「平成28年度予算案」が国会審議中です。
厚生労働省予算の調べ方
では、厚生労働省が出している「概算要求」、財務省との折衝後に出される「予算案」を調べてみましょう。
厚生労働省のホームページから「政策について」、「予算および決算・税制の概要」、「単年度予算」と辿っていくと見ることができます。
最新の平成28年度の「予算案」を見てみましょう。介護関連の担当は「老健局」です。各部局の予算案については下図をご参照の上リンクをクリック。
老健局のPDFファイルをご覧ください。
予算案に見る「認知症カフェ」
PDFファイルを専用ビューアーもしくはウェブブラウザで見ている方は、「検索」機能をご活用ください。ショートカットキー「Ctrl + F」を使えば検索窓が出てきますので、「認知症カフェ」を入力。
平成27年度予算では15億円だった該当事業の国庫負担分が平成28年度予算案では26億円とされ、「認知症カフェ等の設置を推進」と明示されています。
さらに、こちらの図では国、都道府県、市町村、1号(65歳以上)保険料の負担割合が示され、認知症カフェが関わる「認知症地域支援・ケア向上事業」に対して公費が53億円程度が投じられる模様。
厚労省委託の調査研究事業を行う三菱総合研究所の調査「平成26年度 地域包括支援センターにおける業務実態に関する調査研究事業」では、上述の各市町村が運営(委託)する「地域包括支援センター」の数は平成26年9月時点で全国に4,557箇所あるとされていますので、単純に割れば1か所あたり100万円程度になりますね。
もちろん認知症カフェだけではなく「認知症地域支援・ケア向上事業」としての出費ですし、上記の「1,094箇所」が何を意味するのか判然としないのですが、とにかく補助はあるだろうと思われます。
ただし、額は(あっても)大きくない。また、地域差も少なくないかもしれない。というのが現状のようで。
補助に頼った運営は続かない
認知症カフェの設置運営に対する補助金や助成金は、これまで見たような国の政策の大きな流れの中で市町村が実施する形になるかと思われます。厚生労働省の予算(案)など眺めつつ、地域の実情に気を配っていれば情報獲得に遅れてしまうことにはならないかと。
ただ、補助金に頼った運営はそれがなくなったり減額されたりした時に継続が難しくなりますので、実際には介護保険外のサービスを提供したり、生活用品の共同購入窓口になったり、古本買取窓口になってみたりと、独自に収益源を模索する必要がでてきそうです。
全国的に模索段階の今、手探りでも始めてみることに意味はあろうかと思いますので、興味のある方は認知症カフェの開設を是非ご検討下さい。
「認知症地域支援推進員」に関する追記(2016.9)
ふと過去記事について気になったので改めて調べてみますと、本記事内の記載はミスリード(誤誘導)であったかもしれません。
もちろん認知症カフェだけではなく「認知症地域支援・ケア向上事業」としての出費ですし、上記の「1,094箇所」が何を意味するのか判然としないのですが、とにかく補助はあるだろうと思われます。
当記載については、「認知症地域支援推進員」の設置目標数が「1,094か所」であるようです。1年で倍増を見込むと(2018年からは全1,718市町村で実施見込み)。
そしてこの、「認知症地域支援推進員」は市町村で認知症カフェ企画を担う責任者になるようです。
従って、補助金・助成金の情報はお住まいの地域におられる「認知症地域支援推進員」に問い合わせるのがよいだろうと思われます。実際に「認知症地域支援推進員」を担うのが誰であるのか、顔と名前が一致していれば情報を取りこぼす可能性は著しく減じるでしょう。
もちろん公費補助に頼らない地域の有志による独自の実践事例もありますので、ぜひ成書等でお調べください。