介護プロフェッショナルキャリア段位制度は現場に普及するか?

介護業界に身を置く職員方でも「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」と言えば、「何となく聞いたことある」くらいのものかもしれません。

平成24(2012)年度から内閣府内で調整が始まり、平成25(2013)年には制度が開始された比較的新しい(とは言え、既に数年が経過した)取り組みです。

キャリア段位制度

少し調べてみて驚いたのは、キャリア段位制度は介護キャリア段位制度だけでなく、もっと一般的な制度として始まったものだったということです。

2010年、時の民主党政権が政府の新成長戦略の一つ、雇用戦略として打ち出したものだそうで(キャリア段位 – Wikipedia)。介護・ライフケア、環境・エネルギー、食・観光などを重点項目とした段位制度の創設が目論まれました。

が、2012年、例の事業仕分けに置いて「費用かかる割に効果が見えにくい」として一旦は白紙に戻ります。

その後、介護キャリア段位制度は内閣府の検討課題として生き残り、改めて導入されることとなりました。

ゲーミフィケーション制度

実はこうした段位制度は子供の各種習い事等に見られる通り、段位取得者のモチベーション維持に非常に有効であるとされ、現代的な呼び方としては「ゲーミフィケーション」として認知が拡大しています。

ゲーミフィケーションはもちろん、こうした仕事のスキルや習い事のスキル向上だけでなく、ビジネスの様々な分野へ応用可能であると考えられており、実践的な研究が盛んにおこなわれている分野でもあります。

「ヒトが行動を起こす」、「ヒトに行動を起こさせる」というのは、並大抵のことではありません。それを上手く変えるチカラが「ゲーム」にはある。

介護キャリア段位制度もまた、うまくすれば非常に有効な手段となるでしょう。

介護職の目的意識

さて、平成26(2014)年まで内閣府に置かれていた介護キャリア段位制度の検討会は平成27(2015)年度より厚生労働省に移管されました。

  • 介護プロフェッショナルキャリア段位制度の在り方に関する検討会

当検討会名が示す通り、介護プロフェッショナルキャリア段位制度の在り方について検討する会となっています。

実施中の事業

とは言え、介護プロフェッショナルキャリア制度は2013年度より既に在る制度となっています。

厚生労働省の「介護職員資質向上促進事業」の受託先として一般社団法人シルバーサービス振興会が実施している事業がそれに当たります。

ホームページを見るといきなり「アセッサー」なる横文字の専門用語が出てきて焦るのですが、「assess(評価する、査定する)+ or(人)」という英語であり、「評価者、査定者」くらいの意味になるかと。

つまり「アセッサー」は段位認定を目指す人と同じ現場に立ち、介護行為を目視で確認する人のこと。一定の段位習得者が講習を受けるとアセッサーになれるようです。

「面倒」が普及を阻む

ただ、こうした制度の在り方が検討課題となることからも分かる通り、一定の市民権を得ているとは言い難い制度となっています。

その大きな理由の一つは、面倒だから

「アセッサー」の多岐に渡る評価項目は、段位認定を渋らせる大きな要因となっており、当検討会においても「簡略化すべき」の意見が表明されています。

また段位制度を「ゲーム」とみなす場合、報酬設定が行動を促す動機を決定付けるでしょうが、現状では明確になっていません。「適切な介護を行えている」という自負が持てれば十分なのか、「処遇改善」が具体化されるべきなのか、レベルに応じた昇給が必要なのか、いつでも転職に有利となるのか、はたまた別の報酬が必要なのか。

それを知るにはまだ時間がかかるようです。

介護技術の向上は、利用者のため

さらに言えば、段位制度が職員個人のスキル向上を最終的な目的としたものではないとも言われています。

職員側ではなく、利用者側、利用者とその家族にとって最適な介護を実践できなければ、単なるスキルアップでは意味がないのだと。

目的意識を他者が評価するのは困難であると考えられるため、段位としての導入はないと思いますけれども。

普及は遠いような…

検討会の議事録を読む限り、普及はまだまだ一部の事業所に留まるような気がします…が、「今のやり方ってホントはどうなの?」と日々の業務の中で疑問に思われている介護職の方にとっては一考の価値ある制度でしょう。

一般社団法人シルバーサービス振興会の下記ウェブサイトよりパンフレット等の資料がダウンロードできますので、一度、目を通してみてはいかがでしょうか。

厚生労働省「介護職員資質向上促進事業」 介護プロフェッショナルキャリア段位制度