学際的プラセボ研究学会(SIPS)の公式会議が2017年4月にオランダで開催予定

2016年8月現在、プラセボ製薬株式会社が関わっているもしくは参加予定があるわけではありませんが、国際的かつ学際的なプラセボ効果研究団体であるSIPS(Society for Interdisciplinary Placebo Studies)が、第一回の公式会合をオランダのライデンにて開催するそうです。

1st official Society for Interdisciplinary Placebo Studies (SIPS) conference on placebo studies

開催期間は、2017年4月2日~4日とのこと。

会議のテーマ

The SIPS conference is devoted to medical, psychological, and neurobiological research on placebo effects, and will also address ethical dilemmas and treatment options.

「当SIPS会議では、プラセボ効果に関する医学的、心理学的、神経生物学的研究をテーマにしています。また同様に、倫理的ジレンマや治療における選択肢も扱うでしょう」

開催要項に並ぶこうした文言からは、近い将来におけるプラセボ効果の科学的解明に加え、積極的活用を目的としていることが読み取れるかと思います。

興味があれば、ウェブサイトを覗いてみてください。

プラセボ効果を専門とする研究機関

プラセボ製薬株式会社が「プラセボ効果」を中心テーマに据える研究機関としてSIPSを認識したのは、当会議のホームページを発見したことがきっかけでした。

SIPS

主催団体であるSIPS(学際的プラセボ研究学会)のウェブサイトは下記URL。

http://www.placebosociety.org/

参加メンバーの国籍(所属地)を眺めてみると、

  • イタリア
  • ポーランド
  • アメリカ
  • スイス
  • イギリス
  • スペイン
  • オーストラリア
  • ノルウェー
  • オランダ
  • フランス
  • スウェーデン
  • ドイツ
  • カナダ
  • アイルランド
  • 香港

明記されているだけでも国際的な研究者の集まりであることが分かります(「Japan」は見当たらないわけですけれども…)。

プラセボ効果研究機関としてはこのSIPSの他、PiPSも存在しています。

PiPS

PiPSの正式名称は「Program in Placebo Studies & Therapeutic Encounter」。“&”以前だけで「PiPS」が完成しちゃうのはご愛嬌。

ウェブサイトは以下のURL。

The Program in Placebo Studies and the Therapeutic Encounter hosted at Beth Israel Deaconess Medical Center/Harvard Medical School is the first research center to pursue placebo studies through interdisciplinary, translational research initiatives that bridge the basic, clinical and social sciences, as well as the humanities.

「ハーバード・メディカル・スクールのベス・イスラエル・ディコネス・メディカルセンターに置かれた“当プログラム”は、基礎・臨床・社会的研究、さらには人間性をもつなぐ学際的および橋渡し研究構想を通じたプラセボ研究を目的とする世界初の研究機関です。」

PiPSの正式名称はちょっと訳しにくいので“当プログラム”としましたが、どう訳すのが適切なのでしょうか。

「Therapeutic Encounter(治療上の出会い)」が比較的新しい概念のようで、英英辞書には下記のような記載があります。

contact between at least two people designed to enhance the health of one or more of those engaged in the contact. See also therapeutic alliance.

https://medical-dictionary.thefreedictionary.com/therapeutic+encounter

「健康増進のためにデザインされた出会い」くらいの意味でしょうか。人と人とのつながりにプラセボ効果の本質を見出しているのかもしれません。

というかそもそも「Program in Placebo Studies & Therapeutic Encounter」という研究機関名が、上記説明においては「The Program in Placebo Studies and the Therapeutic Encounter」と“the”の挿入がありまして、これがまた翻訳を難しく…。

と言う訳で、あまり深入りせずPiPSはPiPSとしておきたいと思います(「ピップス」か「パイプス」、あるいは「ピーアイピーエス」などその他の読み方かの“日本語読み”問題も未解決…)。

もちろん、プラセボ効果を主題としている研究者が数千人規模で存在しているわけではないため、PiPSに所属する研究者がSIPSあるいはその公式会議へも積極的に参加しているようです。

追記

上記のいくつかの疑問は、PiPS公式ウェブサイト上のFAQで回答を得ることができそうです。

プラセボの積極活用に向けて

ここまでみたように、世界的にはプラセボ効果を「単なる思い込みの効果」として退けるのではなく、科学的テーマとして扱う流れができています。

その目的は当然、プラセボ効果の積極活用にあるように思われます。

プラセボ製薬株式会社では現在のところ、「薬の飲みたがり」に難渋されている介護者さま向けにプラセボ(偽薬)を販売しております。それはプラセボ効果を積極的に活用するというよりは、むしろプラセボがある種の「無」であり、ある程度多量に飲んでも問題が無い(少ない)ために用いるという消極的な利用法を提案しています。

臨床現場における積極的利用を視野に入れつつ、現状ではプラセボ(偽薬)活用に関する拒否感を減らす役割を担うことができればと思います。

参考サイト

再掲もありますが、研究機関等のウェブサイトを挙げておきます。

SIPS
http://www.placebosociety.org/

SIPS公式会議要綱
https://sipsconference.com/

PiPS
http://programinplacebostudies.org/

PiPS研究者(Ted Kaptchuk氏)の動画