食品・飲料・香料・嗜好品の新商品開発における壁はプラセボ効果?

玩味商品、おいしさを提供することを第一の価値とする食品や飲料、はたまた様々な味覚を刺激するタバコやコーヒーなどの嗜好品、嗅覚を刺激することで好ましき何かを表現する香料。

これらの新商品開発においては、数値改善に落とし込むことのできない官能性の評価が不可欠です。各社そのノウハウをつぎ込み、市場に新商品を根付かせるべく開発を日夜続けています。しかし…。

このお菓子、なんでこんなタルい味やねん…
ウケ狙いで1本だけ買わせる作戦ですか?そうじゃないと○○味のジュースなんて出せないですよね…

なぜ煙草からトイレの芳香剤の匂いを漂わせねばならないんだ…
柔軟剤の臭いで気持ち悪くなる…

「どうしてこれで商品化のGOサインが出たのか皆目わからない」と酷評される商品は数多あり、その本来の価値を提供するよりむしろ瞬間風速的話題性という刹那の価値を生み出しては人知れず消えていくものが多いのかもしれません。

どうしてこれでGOサインが出たのか?

それは、プラセボ効果の罠にまんまと嵌ってしまったから…なのかもしれません。

プラセボ効果のワナ

プラセボ効果とは、思い込みによりポジティブな作用を生み出す科学的に説明のつかない現象を示すことばです。

上記記事で紹介されたように、ビデオゲームでもプラセボ効果が発揮されます。

当該研究によれば同じゲームをするにも、「AI(人工知能)を駆使してより工夫を凝らすようアップデートされた」と言葉による先入観を植え付けた方が、やっぱり(?)面白いと感じられたようです。

これを人生に応用すれば、より面白い人生が待ち受けていると思い込むことが出来たならそれこそハッピーになれるやもしれませんが、お気を付け下さい。

人生は落とし穴に満ちていることを、くれぐれもお忘れなく。

ダメだ、ダメだ、全然ダメだ!

  • 創味的な独創をこらす
  • 調味的な発想で仕上げる
  • 矯味的な組合せを試みる

商品開発の各段階において、何らかの変更は取り敢えず改善とみなしましょうとする雰囲気があります。プロフェッショナルが自らの官能に従い、また時間と労力をかけて変更したのだから、それは改善であるはずだ、と。

またもし少数の決定権者が味覚や嗅覚の官能試験における最終決定権者であった場合、第一回目の試作品を認めるのは何となく難しいような。

全然ダメじゃないか!(ここでダメ出ししておけば、次にはもっと“良い”ものが出てくるだろうよ…)

上記のゲームにおけるプラセボ効果を考慮すれば、次に出てくるのは改善が為された良いものであるという先入観が出来上がってしまいます。

そしてそれは、恐るべきことに、実際に良いと感じられてしまうようです。

官能試験の機械化

こうしたプラセボ効果のワナを避けるため、現代では味覚を測定数値に落とし込み、見える化が図られることがあります。

おいしさを科学的に検証してみたり、ビールの旨味を増すよう商品開発したりといったことが既に為されています。

また「味博士」なる名称で度々メディアに採り上げられる鈴木隆一氏は、味と匂いを分析し統合することで新たな地平を切り開きつつあります。

ただもちろんプラセボ効果というか、先入観によっても「おいしさ」は変動しますし、鈴木氏が代表を務めるAISSY株式会社のWebサイトでも、

おいしさは、味を感じる味覚に加え、香り(嗅覚)、食感(触覚)、色合い(視覚)、口に含んだ時の音(聴覚)などの五感や、食べるときの環境・心理状況が複雑に影響しあって生まれます。

https://aissy.co.jp/

と触れられているように、個々の環境・心理状況までをも数値化することは不可能でしょう。

官能試験のアウトソーシング

映画化で話題の『バクマン。』にて描かれた、マンガの面白さに関する評価をアウトソーシングし「みんなが面白いと思う漫画がオモシロいマンガ!」という定義を応用することも可能です。

たくさんのモニターを集め、ブラインド(目隠し)テストを実施し、「みんながおいしいと思う・評価するものが、本当においしいもの」と考えるわけです。

閉じられた会議室内の商品開発を、開かれ、市場調査を兼ねた実験的な商品開発へ。

ただそうすると、似たり寄ったりのパターン化が商品化を阻む場合も考えられるわけで…。

答えがないからやりがいもあって

属人的な判断が欠かせない商品開発、全ての人に受け容れられるはずもない商品開発においては、確定的な答えはどこにもない訳で。

でも、ある種のお菓子や嗜好品には、「やっぱコレだね!」とか「やめられないとまらない」と心より思える素晴らしい商品が既にあるわけで。

価値ある何かを生み出すには、味だけじゃなく、プラセボ効果等々も考慮して、でもそもそも説明不可能なプラセボ効果を事前に仕込むことなんかできなくって…。

悩み尽きぬ商品開発、商品企画のオシゴトはとってもやりがいがありますね!

皆様が開発段階でのプラセボ効果の罠にはまりませんよう、お祈り申し上げます。

自然物の味

野菜や果物を生のまま食べてみたりすると、その完成度の高さに、味覚的なまとまりの良さに驚かされることが度々あります。コテコテの人工物にはないこの感覚は一体…?

「一生食べられなくなるとしたら、どっち?」と問われて、りんごとみかんなら結構迷うのに、チョコレートケーキとみかんならそれほど迷わない。そんな感覚。

ここにも何らかの先入観というか、プラセボ効果が関わっているのかもしれません。

でも、本人はそれがどのような判断によって歪め、矯正されたのか感知することは出来ない。困ったことに。