議事録作成・活用のコツは、「読みたくなる」ように見せるテクニックを磨くこと

企業内で議事録を作成する仕事に従事されていた方の独白が興味深い。

一部を引用しますと、

私が書いた議事録はまず主査と主任代理にチェックをもらって直しを受けます。

そして主任、調査役、課長代理、課長代行、課長補佐、課長、担当課長、別部署の主任代行、課長1、課長2、部長代行、部長補佐、部長補佐2、担当部長、副部長1、副部長2、部長、本部長代行、本部長補佐、本部長、常務、専務と順番に稟議されていくわけですが、当然1人でも却下されたら、また最初からやり直しとなります。

議事録を作る仕事をしていました

こうした調整業務のスペシャリストとして10年以上、議事録に作成されていたそうです。

この独白が、面白くないわけがない。

議事録の機能

議事録の機能や役割は、それを作成した組織に依存します。

企業の場合

利潤を追求する企業のような組織においては、議事録は内向けに作成され外部の目に触れることがありません。

議事録に記載されたインサイダーのみが持つその情報に非常に大きな価値があり、その情報こそが利益の源泉であると考えられるためです。

ただ、人間が3人以上集まれば政治的な関係性が生まれるのも必然で、その秘匿された情報自体の価値よりはむしろ社内政治的な駆け引きを重視しなければならないこともあるようで。

外側からは、意思決定の結果のみ、新製品・新サービスの提供など企業体の行動を通じて窺い知ることができます。しかし、そこに至る経緯には人間関係の軋轢が多々含まれていることでしょう。

議事録作成の仕事が内向きになるのは、「価値ある情報の秘匿」に加えて、「社内力学の調整」を要するためです。

先に挙げた記事内でも、もっぱら社内の調整業務に議事録作成係さんのリソースが割かれ、疲弊している様がありありと描かれています。

公的機関の場合

一方、税金をつかって市民の幸福を最大化することを目的とする公的機関の場合、議事録の意味や機能は企業とは全然違ったものになります。

基本的にその議事録は納税者のために作成され、広く公開されなければなりません。

公の僕たる公務員は自らの仕事が市民の幸福につながることを無上の喜びとしていますので、仕事の成果をより広く知らしめたいと積極的に公開を求めています。

それはまた選挙民の信任を得た議員においても同様であり、自らの仕事が結果のみならず経過を含め公開されることで責任を全うし、できうることなら投票者の利益を最大化したいとも考えているはずです。

公的機関の場合には、議事録を公開することこそが是であり、その隠避は非とすべき悪行に他なりません。

たとえそこに、人間関係の軋轢が滲み出ていたとしても。

ギジロック(GIJIROCK)とは何か?

さて、プラセボ製薬株式会社では、翻案・転載等が可能な公的機関(主に官公庁)の議事録を読みやすい形に書き換えて公開しています。

2019年4月追記

現在、公開を停止しています。再開の目途は立っていません。

官公庁の議事録

官公庁では、法的な根拠を持つ会議がいくつかあります。「審議会」や「分科会」と称される会議には、法的根拠があると考えてよいでしょう。また「研究会」など、重要テーマについて話し合う場として会議が催されている場合があります。

ただし2016年8月現在、GIJIROCKにおいて公開されているのは「厚生労働省」の一部の議事録のみであり、上記の法的根拠による区別にも対応していません。

限定的である理由としては「最も重要なものを優先した」ためですが、「厚生労働省」を優先すべき“技術的な”理由もいくつかあります。

  1. 非常によく整理されている(IDの付加等)
  2. テンプレート(の大枠)の統一

他省庁と比べると、求めている情報へのアクセスのしやすさが最も優れているのが「厚生労働省」だと感じます。それは、医療・介護、健康、労働など日常生活と直結するテーマを扱っている注目度の高さを示しているのかもしれません。

「あの会合のこの回の議事録」を表現するURLが理想的とは言えずとも規則的で、Web全盛時代にマッチしたRESTな思想がアーキテクチャに反映されています。

ただ、その表現部分に関してはやや難があるため(ワープロソフトのHTML出力機能で吐き出された“見苦しい”HTMLの直貼りみたい…と言っても他省庁に劣るわけではない)、現在ではより重要となったスマートフォンやタブレットPCなどで読みやすいモバイル・フレンドリーに価値があると判断し、GIJIROCKを運営しています。

もっと言えば、大きな画面のパソコンでも「読みたさ」を向上させるような表示方法を模索することが議事録自体の価値の増大につながるのではないかと思われます。

冒頭で紹介した記事中にも記載がありますが、苦労して作成した議事録も「ちゃんと読む」人の数は限られています。その原因は「読みたさ」が不足しているためかもしれません。

専門家集団が国のあり方を左右できる?

実は法的根拠を有する「審議会」などの出席者の多くは、“官僚”に加えて“有識者”や“専門家”などであり、選挙等のプロセスを経て信任を得た人ではありません(どういったプロセスで選任されるかは勉強不足のため分かりません…)。

もちろん“官僚”が(幸福の最大化のためとはいえ)国の行く末を勝手に決めることはできませんので、そうした会議では徹底して裏方に回ります。

ただ、“有識者”や“専門家”も、議員のようには法制化についての決定権を持たないため、ある種の「取りまとめ」が最終的な目標となっています。

この「取りまとめ」に基づき法案が作成され、国会にて審議の後、法律として効力を発揮するという流れになります。

実際のところ、国会で否決されれば法案は破棄されるわけで、“有識者”や“専門家”はその点弱い立場にありますが、こうした人たちが時間をかけて決定した事項に対して同等以上の専門的見地から批判できる国会議員はほとんどいないため、実質この「審議会」が決定機関となるわけです。

そうした事情を考慮しつつ、下記のウェブサイトを読んでみると面白いかもしれません。

社会保険制度とかいう日本のタブーについて語ってみる:哲学ニュースnwk

意見表明の前に

もし現行の制度に不満があるのなら、私たちは公開された議事録を読むことから始めるしかありません。そこに示されたプロセスに不満があれば、「国民の意見」として伝えることもできるでしょう。

議事録は会議後すぐに報道されることもありますし、1ヶ月~数か月にはほぼ全文が公表されます。この“早さ”は審議から立法化へ至る過程において、内部事情を知りつつ、意見を表明するのに十分な“早さ”であると言えるでしょう。

この意味で、公開された議事録はコミュニケーションの唯一の可能なツールと言えるかもしれません。議事録をインターネットで公開するという制度なしには、限られた時間で、限られた人員で、国の行く末を左右するとんでもなく重要な事柄を決定するなどと言うことはできないのです。

また当の出席者にとっても「議事録の公開」が国民に向けた意見表明であるとの認識が深まっているようで、多くの議事録には出席者側から「議事録を出来るだけ早く公開してほしい」などの要請が事務局(官僚)に寄せられているさまが記載されています。

現行の制度に不満を抱き、近未来に出来上がる制度について意見があるならば、「まず公表された議事録を読み込め」と言う訳です。公開された議事録を読んでいないと、相手にすらしてもらえないと覚悟しましょう。

審議に当てられる時間は有限なのです。

そしてまた、議事録を読み込もうとする人にとっても時間は有限です。

もし、その時間をより有意義なものにすること、ストレスを極力感じないものにすることに資するならば「GIJIROCK」には価値があると判断したいと考えています。

おわりに

企業内の議事録作成係さんの独白から遠いところまで話が延びてしまった気もします。

ただ、行政機関においては議事録が(ほぼ唯一の)コミュニケーションツールとして活用され、(恐らくは)機能しているという例を見れば、企業が作る社内向けの議事録にさらなる価値を持たせることは可能かもしれません。

法令上作成が義務付けられた商業登記関連の議事録以外の、意思決定に関わる会議の議事録は使い方を変えれば利益を拡大させるかもしれませんし、あるいは社内の組織構造を破壊的に変革するきっかけとなるやもしれません。

また、官公庁の議事録は会議運営と議事録作成に関するスキルをリアルに学ぶ機会としても、またとない実例を提供してくれます。

紙ベースで「読みたくなるように見せる」というのは難しいかもしれませんが、タブレットPCなどを用いればその「表現」をよりよく変えることは(若干の知識か、専用のアプリを使う手間)さえあれば可能なはず。

議事録を「価値あるもの」にすることは、議事録作成者の地位向上にも繋がるかもしれません。

興味がありましたら、ぜひご一読を。