宇宙に行けば重力もなくなって、いつでもハンモック気分で気楽に眠れる…というのはウソみたいなウソの話です。
ヒトは宇宙でうまく眠れない。
睡眠問題の解決は宇宙開発における喫緊の課題となっています。
宇宙飛行の夢
宇宙飛行士は眠れない
『宇宙飛行士は睡眠不足、睡眠薬服用でリスクも 米研究:AFPBB News』で紹介されている研究論文によれば、宇宙飛行士は慢性的に睡眠不足であり、約75%が宇宙で睡眠薬を服用しているとのことです。
地球上でも経験するように睡眠不足ではパフォーマンスが低下するため、睡眠薬を使ってでも眠りを確保したい。しかし、睡眠薬を服用してしまうと緊急警報で目覚めた時に正常な判断力が保てない…。宇宙活動における判断ミスは致命的な結果を招きかねません。
宇宙飛行士は眠りたい
体内時計を含む全ての生理機能を地球という特殊な環境に適応したヒトにとって、宇宙での生活はいつだって困難が伴います。宇宙で地球を再現する、というのも一つの大きな手段となっています。(参照:『宇宙飛行士に安眠を|日経サイエンス』)
また宇宙空間という環境に加えて、「命がけで眠る」という強迫的なスタンスそのものも良質な睡眠を妨げてしまいます。
もしかするとそこには、プラセボの活躍の場があるかもしれません。
プラセボの使い道
プラセボで睡眠導入
プラセボを使った睡眠問題へのアプローチとして真っ先に思いつくのは、プラセボ効果による睡眠導入です。
睡眠導入剤であることを仄めかすパッケージに入れられた、睡眠導入剤のようなプラセボには一定の睡眠導入効果(=プラセボ効果)が期待できるでしょう。
パッケージやネーミングはもちろんのこと、薬剤そのものの形(錠剤、カプセル剤、あるいは注射剤など)や色や味や匂いまでこだわって作れば非常に優れた効果があるかもしれません。
ただし、これを服用する当の宇宙飛行士がプラセボであることを知っていた場合に「やっぱりプラセボだとあんまり効かないのでは…」という疑念を抱かせるという問題があります。
プラセボ効果の発現において信じることは重要な要素であり、信じることなくして最高のパフォーマンスを発揮することもないでしょう。逆に、信じすぎてプラセボでフラフラになることも考えられますが…。
プラセボで即効覚醒
眠る時はプラセボでない睡眠薬を用いつつ、緊急時対策としてプラセボを用いる方法も考えられます。
例えば、ペン型自己注射プラセボ。
糖尿病患者の使用しているペン型自己注射器に生理食塩水など薬理作用のないものを入れておき、「Emergency!(緊急事態!)」と大きく表示したラベルを貼ります。
これを寝起きのぼんやりした時に太ももなどにプスッと刺すことで、覚醒を促します。もしかすると太めの針あるいは高張液で、「結構痛いね!」くらいが丁度良いかもしれません。
プラセボ効果の応用範囲は宇宙規模で拡がってゆく可能性があります。