統合医療を広める戦略

統合医療を広める戦略

統合医療という考え方があります。

近代西洋医学に基づく医療と、伝統的な東洋医学を中心とする補完代替医療。統合医療はこれらを統合して、患者に最適な医療を提供する考え方と捉えておけば大きく間違っていないはず。

統合医療は拡大の一途をたどっているでしょうか。そうでないのが現状でしょう。

統合医療を阻む要因

統合医療の理念や良し。ならばなぜ広まりが限定的なのでしょうか。

統合戦略の現状

現在のところ統合医療の拡大を求める当事者は、どちらかと言えば補完代替医療の支持者・施療者に偏っています。

この非対称性は、医療の統合を進める戦略においてより明確になります。それは、補完代替医療にも近代西洋医学が求める科学的根拠があることを証明しようとする戦略です。

対等な立場からより上位の統合的状態を目指すという対称性は、この戦略にはありません。あくまで、補完代替医療の側から近代西洋医学の側へ歩み寄るという非対称な取り組みです。

科学の強さ

こうした状況は、近代西洋医学が科学的発想に基づくという事実から生じています。現代社会において、科学は特別な地位を得ているためです。

科学は、いつでも、どこでも、だれにでも適用可能な知識を提供してくれます。こうした知識の価値はグローバル化が進展する社会情勢においてますます高まります。

ごく私的な、主観的な価値観に基づく情報の価値が、他者にとっても価値があるとは限りません。

一方、科学の進展により得られる客観的な情報の価値は時代や地理を超えて他者と共有可能です。

科学の強さは、そのまま近代西洋医学の強さとなり、補完代替医療との関係において「上下関係」と見做せるような非対称性をも獲得しています。

統合医療を阻む大きな要因がここにあります。近代西洋医学の支持者・施療者には、下方へ向かうことを意味する統合の価値が見いだせないのです。

統合医療を進める戦略

ではこうした現状理解に基づき、統合医療の価値を共有して実践を拡大する戦略とはどのようなものでしょうか。

科学を深く理解する

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

東洋には優れた思想があります。孫氏の兵法もその一つ。

東洋医学を中心とする鍼や灸など補完代替医療の施術は科学的エビデンスを構成する要件を満たしにくい特徴があり、統合に向けた現状の戦略が有効に働きません。

己を知るだけではダメ。ならば孫子に学び、彼を知りましょう。彼とは近代西洋医学であり、科学です。科学とはどのような所作のことでしょうか?あるいは近代西洋医学とは?

非対称性を解消する

また科学や近代西洋医学を深く理解する上でも戦略が必要です。「科学や近代西洋医学を深く理解する」とはどういうことか、何をどう分かればいいかは自明ではないからです。

近代西洋医学とは、どのような医学体系なのでしょうか?はたまた、東洋医学とはどのような医学体系でしょう?

このような問いに答える一つの方法は、それぞれの体系が従うルールを明示的に比較することです。

ルールの違いが体系の違いを生む。この考え方に基づき、ルールを整理しましょう。この手法に従えば、東西の医学がなぜ非対称な扱いを受けているかが明らかになるはずです。そして、立場の対称性を回復する方針をも示してくれるかもしれません。

なお東西の医学が対称性を獲得する時、上下あるいは主従のような非対称的関係を示唆する「補完代替医療」という呼び名は変更を迫られるでしょう。

プラセボ効果が鍵になる

上記のような戦略に基づく研究に着手するには、具体的なとっかかりがなければ難しいかもしれません。

「蟻の一穴天下の破れ」と言います。些細な事柄をきっかけとして、大事につながる。そうした状況を表す言葉です。

近代西洋医学にはプラセボ効果という概念があるけれど、東洋医学にはそれがない。

プラセボ効果に関する医学的扱いの非対称な状況をうまく説明できれば、蟻の一穴となるかもしれません。『僕は偽薬を売ることにした』では、この点に踏み込んでいます。ご参考まで。

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